WHITE BOOK
走りながら白本を開く。
《まずは人々の洗脳を解きましょう。この白本術をブラストで唱えてください。》
エリカの指示を読み、洗脳のかかった全ての人が対象になる位置でブレーキをかけて立ち止まる。頼斗もつられて速度を落としたが、目で行くように促した。
頼斗が再び速度を上げたのを確認してから、右ページの詠唱に導入をつけて読み上げた。
「桜木想楽の名において命ずる。その心に宿るは太陽、夜明けを忘れた魂に再び光を!」
初めて読む詠唱だったが、体内を駆け巡る魔力の温かさ、具現したペン先の淡い光で成功を確信する。
男はたすき掛けにしていたバッグから細い棒を取り出し、風を切る音が聞こえるほど勢いよく振るってこう叫んだ。
「プレストっ!」
「スパイラル、フレアショット!」
同時に頼斗も波動のスパイラルを発動する。男の持つ棒から想楽に向かって放たれた、何か衝撃波のようなもの――彼の世界の魔法なのだろうか――が火の玉に打ち消される。そこにすかさず、想楽が白本術を放った。
「ブラスト、覚醒陽光(モーニングサンライズ)!」
ペン先から広がる光は、男と頼斗と、その他集められた人達を、トラックの中も含めて明るく照らしていく。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ