WHITE BOOK
音楽による洗脳、ということだろうか。
男はフィアルのように見えたので、何か源力操作でも使っているんじゃないかとは思ったが、頼斗に聞くと源力は使われていないとのことだった。
「……なら、どうやって?」
うーん、と考えても答えは出てこない。もしも男の髪が黒ければ、嵐の言っていたブラックホルダーの能力だと片付けることも出来たのだが。
「源力は使ってなくて、ブラックホルダーでもないんですよね?」
顎に人差し指を添えてセイファーが呟く。その言葉で想楽は1つの可能性を見出した。急いでエリカを本の形に戻す。
《想楽様、あの男からタンジェリンの存在を感じます!》
いつもより太字の明朝体でつづられていたのは、やはり白本の精の名前。以前エリカとアイリスが会話をしていた時、一度だけ出てきた名前だった。
「やっぱり、あの人白本の使徒だ!」
想楽は、もう姿の見えなくなった集団を追うために走り始める。その横をりぼんが一気に抜いていく。こうやって並んで走ってみると、りぼんの走る速度は本当に速い。
「向こうへ行ったよ!」
りぼんについて、セイファーと頼斗もあわてて走り始めた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ