WHITE BOOK
瞬時、視界に飛び込んできたものはふたつ。
ひとつは、正面に大きく開けた窓からの景色。いつも見てきた青い空に白い雲は同じだが、学園から見える景色とはまるで違った。家々の屋根は不自然なほどカラフルであり、マンションのような高い建物は一切見あたらない。
もうひとつは、鼻腔をくすぐる香ばしい香りだ。小麦粉の類を焼いたようなその香りは、新代学園駅の近くにあるベーカリーを思い出させる。
今いるこの場所が2階であると判断した想楽は、階段を探して下に下りることにした。
廊下の突き当たりにあったこの部屋から、逆サイドにあるリビングまでに扉はふたつ。おそらく、ここに住んでいる家族の部屋だろうので、扉を開けることは控えておいた。
リビングの手前に階段を見つけた。
「このまま下りるのもいいけど……リビングにも人はいるかもね。」
つぶやいた想楽は、思い切ってリビングに足を踏み入れた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ