WHITE BOOK
しばらくして体がだいぶ楽になったので、起き上がった。
正面にクリーム色の壁、左からきれいに整理された机と本棚、三面鏡の鏡台、飾りはないが高級そうなチェストとクローゼットが並んでいる。左を向けば出窓に飾られたピンク色の花。右側にはオレンジ色のカバーをかけたラブソファーとそれにあわせたローテーブル、そしてその上に置かれたあの白い本。
とりあえずこの部屋には、想楽の他に誰もいないようだ。
ベッドから降りて、足下にそろえてあった黒いローファーを履いた。服装は変わらず、制服のままだ。
そして、本に説明を求めるべく、ソファーテーブルに近付き、つぶやいた。
「ここが、あんたの世界?」
はたから見るとかなり怪しい行動なのだが、本人はいたって真面目である。
問いかけてから本を開けば、そこに本からの答えが書いてあった。
《間違いなく、我々の世界「epoch」です。エポック、と発音します。》
間違いなく、と言われても世界の名前を教わっても、いまだに半信半疑な想楽。
この部屋にあるものは、この本を除いて、想楽の世界にも存在しておかしくないはずだ。花はさほど詳しくないため、花瓶の中のそれが存在していたかは定かでないのだが。
人に会えば、何か分かるかも。
このまま本と話をしていてもらちがあかない。そう判断した想楽は、本を抱えて窓の向かい側にある扉を開けた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ