WHITE BOOK
想楽もソアラも、思わずセイファーのほうを振り返る。表情を変えず、プレートの古代語を見つめたままのセイファーが、続けてこう言った。
「ヨグギネ、ドンパロドコヒ“リコチキ”マ……?」
そのつぶやきは、あの謎の言葉だった。
「まさかとは思うけど……セイファー、読めるの?」
聞いてみると、セイファーは頷いた。
「アニ、ソペタウソ。――あぁ、じゃなくて、読めますよ。」
修正しながらの言葉に、想楽は驚く。それよりも、ソアラはさらに驚いていた。読める人がいない文字を異世界の人間が読めると言うのだから、無理もない。
想楽の隣にしゃがみこんで文字をなぞりながら、セイファーが言う。
「ぼくの祖国の言葉で『サビマログ』と読みます。『ありがとう』という意味ですね。」
セイファーの祖国の言葉と古代語の文字が共通しているのかも知れない。では、時折セイファーが発するあの言葉も、セイファーの祖国語――epochの古代語なのだろうか。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ