WHITE BOOK
「なんだ、あれ?」
グラウンドでひとり昼食をとっていた男子生徒がそれに気付いた。
屋上にある給水タンクが、白い光に包まれているその状況に。
「気になる……行ってみよう。」
彼は立ち上がり、かばんも食べかけの弁当もそこに残したまま走り出した。
一段とばしで階段を駆け上がり、屋上の扉を勢いよく開ける。
光はもう消えているようだったが、もしかしたらエイリアンでもいるんじゃないか、と思っている彼は、足音を殺しタンクに近付いていく。
そっと覗きこんだタンクの陰には、誰もいない。代わりに、学園指定の通学かばんが2つ置いてあった。
水色とピンクの包みは空の弁当箱。かばんの片方はチャックが開きっぱなしで、中をうかがうことができた。
悪いとは分かっているが、彼はその中身を確認する。白地に桜色の水玉模様のマグカップ。だいぶ古い型のMDウォークマン。女子のかばんだろうと推測できるのは、3種類も無造作に投げ込まれているシュシュのおかげだ。
かばんの内ポケットに申し訳なさそうに入っている赤いパスケース。彼はそれを取り出して、定期券に書いてある名前を確認した。
カタカナで書かれたその名前は、「サクラギ ソラ」。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ