WHITE BOOK
「桜木想楽の名において命ずる。正の時間(とき)に目覚めよ、慈愛乃闘神(カインドマルス)。そして我らを、矛盾の時間へといざなえ!」
ほぼ棒読みだったが、語尾だけはしっかり強く。
一字一句間違いなく読み上げた想楽と、それをすぐ隣で聞いていた美姫は、今度は何が起きるのかとあたりをきょろきょろと見回し始める。
太陽は赤く、空は青く、雲は白い。目の前に広がる景色は高等部のグラウンド。
「……何も、起きないね。」
美姫がつぶやいた。
「これだけ期待させといて、実は嘘でしたとかいうオチはないよね。」
想楽がつぶやきに答えたその時。
一陣の風が吹き、本のページを何枚か舞い上がらせた。自然の力で開かれたページに、ふたりは視線を落とす。
《マスター、想楽。確かに認識しました。我々の時間へご案内いたします。》
左のページには本の言葉。
右のページには、大きな白い光があふれていた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ