WHITE BOOK
最後のページを開くと、確かに文字が書きつらねてあった。その最初の部分に、四角がひとつ。
おそらくここに名前を書けばいいんだろうと判断した想楽は、羽根を手にした。
「……あ、インクなんてないんだけど……。」
そう口に出してみて思う。インクの必要な魔法のペンというのはいかがなものか。
「ものは試しだって、想楽。」
美姫にうながされ、想楽はペン先を四角の中で走らせた。
「うわぁ……!」
それを見て美姫が感動の声をあげる。
羽根ペンの走った軌跡は、青い光の文字となって、そこに想楽の名前を映し出していた。
もちろんのごとく、書いた本人も驚いている。
「すごい!これは本当に期待しちゃうかも!」
ひとしきり感動した後は、いよいよ呪文を唱える時。
想楽は深呼吸したり、あーあーと声を出してのどの調子を確かめたり、きちんと座りなおしたりとひどく緊張した様子をしばらく見せた後、よし、と気合いを入れて呪文を読み始めた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ