WHITE BOOK
「悪魔、ねぇ。」
腕組みをしてソアラが考える。想楽も考えるが、次にフィノンが発言するまでの間に答えを導くことができなかった。
「セイファーさんの世界では、そんな意味なんだ。」
「どういうことですか?」
ぱっと顔を上げたセイファーが、フィノンの顔をうかがう。
「今ちょうど走ってるこの地区、フリーテアハートって言うんだけど、死に行く運命だった親友を救った英雄のことが語り継がれているんだ。確か、その英雄の名前がセイトゥンだったはず。」
硬直したまま話を聞くセイファーの周りには、何か考えているのか山吹色の響きが飛び交っている。想楽は彼の方を向いて言った。
「クフィリア教で言うセイトゥンと、セイファーの言うセイトゥン、それからこの地方の英雄セイトゥン――3つ全部違うものだとしたら、私は一番いい意味を信じたいな。」
今度は想楽の方を向いたセイファー。先程の表情はどこへやら、彼は笑顔だった。
「そうですよね、安心しました。」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ