WHITE BOOK
シートベルトの装着を確認すると、少女は源力操作を解いた。白い膜が少しだけ余韻を残して消えていく。
今度は急いで窓を閉め――昔懐かしの手回し式だった――、男性に向かって頷く。
「出発して大丈夫だよ。」
男性も頷き返し、ギアを入れながら言った。
「じゃあ、行きますよ。しっかりつかまっていてください。」
サイドブレーキを下ろし、アクセルを思い切り踏み込んだ。瞬間、上体が置いていかれた感覚と共に座席の背もたれに背中を打ちつける。窓の外の景色は、この世界に来てから一番速い速度で流れ、3人を囲んでいたフィアル達も当然、その場に置き去りにしていった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ