WHITE BOOK
「今日は本当にありがとうね。これ、少ないけど。」
そう言いながら、3人にそれぞれの名前が書かれた封筒を手渡した。少し重みのあるそれを開けてみると、中から1枚の硬貨が出てきた。複雑な模様と、中央に「100」と書いてあるその硬貨が、この世界の通貨「粒」であることに気付くのはそう遅くない。
「そんな、悪いですよ。」
セイファーも分かったようで、なんだか申し訳なさそうに言う。いいのよ、と返すネールは笑顔だ。
「アルバイト料と思って、受け取ってちょうだい。」
その笑顔には、断ることのできない何かすら感じられる。ネールに気付かれないようにしているのか、背中側に少しだけ響きを出現させてから、セイファーは言った。
「では、ありがたくいただきます。」
この年にもなると、自分の意見を通しやすいんだろうな。
そんなことを考えながらお礼を言い、食堂を後にした。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ