WHITE BOOK
両側を魚屋に挟まれたその店の名前は「米宮食堂」。どうやらディアル名の名字が米宮だかららしい。名前の構成通り、ディアルの文化は和風なものなのだろう。
かなりの人が並んでいるが、ソアラが関係者なので堂々と裏口に回った。チャイムを鳴らすと、程なくして女性が顔を出した。
「あらソアラちゃん、いらっしゃい。」
「こんにちは、ネールおばさん。」
「最近忙しいみたいね。お言葉、聞いたわよ。」
「そうなんですよ。」
簡単な挨拶をしているソアラを眺めていると、家の奥――つまり店舗側から大きな声が聞こえてきた。
「母さん、早く!」
「あぁ、はいはい。ちょっと待って。」
ソアラがネールと呼んだ彼女はその声に返事をしてから、申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、今忙しいものだから。」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ