WHITE BOOK
「不意打ちだなんて、いけませんよ。」
男達に向かって、セイファーが言った。右手に持っていた杖はいつの間にか無くなっている。
「男なら、正面から正々堂々と勝負を挑んだほうがかっこいいですよ?」
セイファーの声のせいか、丁寧語のせいか、それとも表情のせいだろうか、男らしい台詞もそのように聞こえない。2人には挑発に聞こえたらしく、
「なんだぁ、ケンカ売ってんのか?」
「女みてぇなくせに、生意気なガキだな。」
売り言葉に買い言葉、と言わんばかりの返事をして、こちらに近付いてきた。
何が起こっているか、と野次馬が集まってきた。この雰囲気なら集まっても仕方がないが、逃げ道は塞がれてしまった状態だ。
セイファーの肩をつついて周りを示す。彼も納得したようで、ため息をついた後、男達にこう言った。
「こんな状態じゃ仕方ないですよね。少しくらいなら遊んであげてもいいですよ。」
それから、わざと右手の甲が見えるように、胸の前に手を置くセイファー。想楽はそれを確認してから、左手のブレスレットに触れた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ