WHITE BOOK
誰に会うわけでもなく、港に辿り着いた。
沈みかかった夕日が見事に赤く色づき、海と船と建物を照らしている。明日の漁の準備で忙しいのか、だいぶ遅くなったこの時間帯でも人通りが多い。
ソアラは船のチケットをとってくると言い、どこかへ行ってしまったため、そこには想楽とセイファーの2人が残された。
「すっかり暗くなっちゃったね。」
想楽が呟くと、セイファーもそうですねと頷いた。
「夕日、きれいですねぇ。」
軽く相槌を打って、左側に立つセイファーの横顔を視界に入れる。円く大きな黒の瞳は、夕日に照らされていてもなお黒い。もっと彼が男性的な見た目をしていたら恋に落ちそうなシチュエーションだ、と感じた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ