WHITE BOOK
「まぁ、あたしはあんまり地名の由来とか知らないから、もっとあるとは思うけどね。」
バックで歩くソアラがにっこり笑う。へぇ、と感心した顔の想楽の後ろから、なにやらぶつぶつと独り言が聞こえてきた。それはセイファーの声で、こう聞き取れた。
「……ジュイース、ナル……ルリア……?」
振り返ってみると、足を止めたセイファーが数歩後ろに見えた。
「おーい、セイファー?」
「……あ、なんですか?」
想楽が呼びかけると、セイファーはぱっと顔を上げた。
「なんですか、じゃないよ。大丈夫?」
頭の後ろで指を組んだソアラが、セイファーに聞いた。すみません、とセイファーは笑顔を作る。
「大丈夫です、ちょっと考え事をしてただけですから。」
その作り笑顔にしては完璧すぎる笑顔に、何を考えていたのか聞き返すことができなかった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ