WHITE BOOK
セイファーは、みるむがさらわれるに至った経緯を話し始めた。
「時間で言うと、つい2時間ほど前なんですけど――ぼくはみるむさんと美姫さん、それにみるむさんと一緒に暮らしているクフィスさんの4人でみるむさんの家を出たんです。そしたら家の前に、サリーさんのような触角の生えた男の人と、ひらひらの多い黒い服を着た女の人がいたんです。」
電車で聞いた話によると、触覚の生えた人は「スピリチャ族」という人種らしい。耳の形状によって属性が4つに分かれていて、魚のひれのような耳を持つサリーは水属性のスピリチャ族だ。
「その人達がみるむ様を……?」
遠慮がちにサリーが聞くと、セイファーはうつむいて続けた。
「はい……ぼくはどうすることもできませんでした。ぼくにとって、この世界の力は未知の力ですし……。」
源力操作はセイファーの世界にもないらしい。未知の力ほど怖いものはない、という心理をついこの間利用した想楽は深く頷く。
「仕方ないよ、それなら。」
ソアラもトレーニングホールでのことが頭にあったのか、首の動きで肯定を返してくれた。
「たとえみるむが説明してたとしても、やっぱり本物見ないと分からないもんだし。……それに、みるむの説明じゃさっぱりだろうしね。」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ