WHITE BOOK
「そっか、ありがとう。」
納得した想楽は礼を言って本を閉じた。そしてそれを膝の上に抱えたまま、また窓から外を見ることにした。
想楽が知っている電車の速度よりも、だいぶゆっくりと景色が流れていく。今は澄んだ水色の川沿いを走っているようだ。今まで濁った作り物の川ばかりを見てきた想楽にとってはとても新鮮な景色であり、広いこの世界にはどれだけこんな場所があるんだろう、と心弾む感覚だった。
「こんな景色がずっと続くなら、1日なんてあっという間だろうな。」
昨日の朝とはまったく違う電車の旅に、想楽は心を躍らせていた。なんせ、行き先は退屈な学園ではなく、森の中にある教会なのだから。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ