WHITE BOOK
「まぁ、昨日は寝てないみたいだし仕方ないか。」
言って、左手首につけている白いブレスレットに触れた。
「えーと、ブック!」
想楽の言葉に答えるかのようにブレスレットが光を放つ。光が消えた頃には、それは1冊の本に――慈愛乃闘神、エリカになっていた。
常に本を持っていることは持ち主の負担になる。だから普段は「リング」と唱えてブレスレットの形にしておくといい。白本術を使うときや白本の精と話すときには本の形にしておかなければならない。リングの状態から本に戻すときは「ブック」と唱える。
これも、トレーニングホールでエリカから教わったことだった。
もしかしたら、ソアラに聞こうと思ったことがエリカにも分かるかもしれない。
そう思った想楽は、エリカに聞いた。
「ねぇ、この辺って秋なの?今6月のはずなのに。」
開いたエリカは左のページには返事を、右のページには何かの地図を表示していた。
《今我らがいる場所は、右の地図の印の場所、エアウェー国ジュディーパリス地区です。中央の赤い線が赤道で、ここは南半球となります。自転軸の傾きは想楽様の世界と同じであり、北半球にあった想楽様の国とは季節が逆になります。》
大きく分けて南東にある大陸の中央下部あたりに、星印がつけられていた。確かに赤道よりは南にあり、自転軸の傾きが季節を作っているわけだから、季節は逆でもおかしくなさそうだ。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ