WHITE BOOK
階段を駆け足で上ってくる足音。それは軽い足音であり、おそらくは子供か女性のもの。もしかしたら覆面の女性かもしれない、と想楽は身構える。
「想楽ぁーっ!」
それは、聞き覚えのあるソプラノだった。
「ソアラ?」
受付の男性以外はまだ知らないはずの、残り1人の名前を知っているのはソアラだけだ。少し気の抜けた想楽は、恐る恐る階段を覗きこむ。
踊り場にソアラが立っていた。
「よかった、怪我とかない?」
2階の廊下に立つ想楽の元に駆け寄りながらソアラが聞いた。そして頷いて返事を返す想楽の後ろで伸びているコウジを見つけ、驚きの表情でさらに聞いた。
「あれ、想楽がやったの?」
「うん、まあね。エリカはたぶん生きてるんじゃないかとは言ってるけど。」
また頷いて、言葉で補足を付け加えて答える。今度はへぇ、すごいねという表情に変わったソアラは、続けてこう聞いてきた。
「で、エリカって……誰?」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ