WHITE BOOK
その勢いは最初のときと変わらない。ただ、今度は氷漬けになった部屋を溶かしていくという形で、それを目に見ることができた。高温の見えない炎が氷を水へ、さらに蒸気へと変化させながら、その範囲に立つコウジをも包み込んだ。
「うぎゃああぁぁーっ!」
炎を浴びたコウジは吹き飛ばされ、階下にも聞こえるほどの叫び声を上げて、開けっ放しの扉から飛び出し、窓のぎりぎり下に背中を打ち付けて、それから動くことがなかった。
忍び足でコウジに近付く。
「死んで……ないよね?」
正直、まだ前科は作りたくなかった。いや、そんなものは一生作りたくない。
白本を開くと、エリカからの返事が書かれていた。
《我が白本術に殺傷能力はありません。気絶はしているでしょうが、しばらくしたら目を覚ますはずです。》
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ