ねむい
きみを愛することができなかったのはぼくなのだろうか。ゆっくりと朽ちていく香りがして、目を閉じてもネオンがちらちらと下げしく世界を揺らすので、難しいと一言つぶやく。熱い風と冷たい指先が反射するように長く黒い髪に絡まっていく。許せないからセピア色した骸骨があの日のように赤く赤く染まっていく。刺した炭が馴染んでいく。黄色く染まった視界で笑ったぬいぐるみと一緒に手をつないで、美しすぎる童話に復讐されよう。狂った調律のチェンバロは甲高く喚く。少年の貌をしたキツツキが嘘ばかり吐いて、泥沼の中の渦を作った。雪の世界で生まれた結晶は飲み込んだが最後、猛毒になって彼を眠りに誘った。血の味がする。纏わりついた泥を払えども払えども、もとから白くない手は赤く染まっている。耳鳴りの奥で囁く声はきっとあちらから。ふふふ、とまた一つ笑って首を絞めたのは誰だったのだろう。もう思い出せない。記憶は毎日死んでいって、僕も死に、彼女も死に、残るものはなんの変哲もない積み重ねた罪だけ。リンゴが熟れたら、最後の罰を受けようか。贖われることのない色に夢夢、唾液を湿らせて。リンゴのうた、これにて。
澄み切った世界でアナフィラキシー。笑っちまうね。