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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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あやかしの棲む家

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 その声はたしかにるりあの喉から発せられていた。だが、るりあには似てもぬつかない、野太く嗄れた声だった。
 屋敷から猛烈な速さで巨大な影がやって来る。
 巨大な蜘蛛だ。
 ひとを喰らえるほどの大蜘蛛がるりあに向かって糸を吐いた。
「おのれ、化け物の分際で小癪な!」
 またあの声でるりあが叫んだ。
 その間に克哉は地面を這いながら落ちている心臓の山に向かっていた。
「こいつをどうにかすれば……あと少し」
 あと少しで心臓に手が届く。
 糸に藻掻きながらるりあが憤怒する。
「ぬううう……そうはさせるかぁぁぁっ!」
 まるで時が止まったようだった。
 風が静まり。
 その場にいた全員が息を呑んで動きを止めた。
 焦りを浮かべるりあは振り返った。
 動き出した時の流れ。
 鳥居の先で空間が渦巻いている。
 それはるりあがこちら側に来たときに似ていた。いや、それよりも大きく巨大な渦だ。
 風が泣き叫んだ。
 吸いこまれる。
 小さな屋敷の破片が空間の渦に吸いこまれた。
 次にるりあが――!
 最後の瞬間、るりあは克哉と瞳を交わした。
「克哉!」
 それは儚げな女の声。
 克哉は地面に爪を立てた。下半身はすでに浮いてしまっている。持ちこたえることはできなかった。
 渦は克哉をも呑み込んだ。
 そして、大蜘蛛も、巨大な屋敷すらも。
 なにもかも、なにもかも。
 やがて静まり返った世界に残されたのは、広大な荒野にぽつりと佇む鳥居のみ。