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SDSバスターズ~ピエロ退治します~

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<章=ところ変わってJapanで出会い!>
 
 俺は鈴村(すずむら)和真(かずま)。高校二年生、バスケ部。至って普通の高校生だ。否、だった。俺は一週間ほど前から妙なものが見える。
 妙なものとは色とりどりのピエロだ。このピエロは俺以外には見えないらしい。最初は恐ろしかったが、見え始めてから二、三日しても俺に危害を加えることはなかったのでそのままにしている。
 一週間もすると人は新たな環境に慣れてしまうのだ。慣れって怖い。ただ――夜寝ようとベッドに入ってふと窓を見たところ、ピエロが一人窓に張り付いて中を見ていた時はさすがに驚いた……。
最近では、路に寝転んでいる奴らを避けることも上手くなった。まだ奴らに触れたことはないので、実際触る事が出来るか分からないが俺は極力ぶつからないようにしている。
 そして今日も、奴らを避けながら学校へと向かう。音楽を聴きながら。ふと前を見ると路の反対側を歩いている女性に目がいった。よく見ると、女性の背中に青いピエロがついていた。これは初めてだ。だが、特に女性におかしいところは見られなかったので俺はそのまま学校に向かった。
 交差点に差し掛かると何人もの灰色のピエロが集まっていた。ここまで同じ色のピエロが多く集まっているのを見るのは二度目くらいだ。以前は特に何もなかったので、俺はそのままスルーした。
 そして今日も、普段通り授業を受けた。体育の時間、学年一足が速い奴が走っていたら、隣をこいつにだけは絶対負けまいと走る黄色いピエロを見るのもここ最近では当たり前になっていた。
 あ、今日は負けたのか。黄色は膝を叩き悔しそうに泣いている、様に見えた。
 放課後になり、俺は友達の誘いをただの気まぐれから断り家路に着いた。いつもの帰り道には少し大きめの空き地がある、はずだった。しかし、空き地だった場所には真新しい二階建てのビルが建っていた。ビルには “太宰(だざい)探偵事務所”と書かれた看板がかかっていた。
「あれ、昨日までここ空き地じゃなかったっけ……」
 確かに、昨日までここにはビルなどなかった。一晩で作り上げたのだろうか? ありえない。俺は不思議に思いながらもその看板を読んでいた。
 迷い猫探し、不倫調査、落し物の捜索……ここまでは至って普通の探偵事務所と同じだったが、次の一文に俺は目を奪われた。

『ピエロの退治。』

 は? もしかして、奴らは一般の人にも見れるものなのか? というよりも、退治するもの、なのか?
 俺は混乱していた。すると、後ろから声をかけられた。「どーしたよ。青年」
「は?」
 俺に声をかけてきたのは、身長百八十㎝ぐらいで年齢は二十後半ぐらいの見た目がチャラチャラしている男性だった。
「うちになんか用か?」
「え、いや特に何もありませんけど……昨日までここにビルなんてなかったよな、と思って見ていただけです」
「そーか。じゃあ、まぁなんかあったら言ってくれや。格安で引き受けてやるよ」
男はそう言って、ガッハハハと豪快に笑い、世の中にはたくさん不思議なことがあるんだぜ、と呟きビルへと向かった。
「あ、あのぉ」
 俺の質問がうまい具合にスルーされたことには、触れないでおこう。なんだか、そこを掘り下げたらいけない気がする。
「あ? 何だ? やっぱなんかあったか?」
 そう言って男は先ほどとは違う笑顔を見せた。
「この看板に書いてある一番下のことなんですけど」
「行方不明者の捜索か?」
「いや、その下です」
「……!? もしかして、ピエロのやつか?」
「そうです」 
「そうか。なぁ、ちょっと寄ってかないか?」
「え?」
「いいから、いいから」
 そう言って男は俺の腕を掴んだ。
「え、あ、ちょっと!」
 男の力は意外と強く、俺はズルズルと引きずり込まれてしまった。
 ビルの中は真っ暗だった。
「あ、またやってんのか。あのボス」
 そう呆れたように男は呟き、ため息をついた。
「アリア、客来た。電気付けて」
 すると暗闇の奥から、はい。了解しました、と女性の声が聞こえた。とたんに部屋に明かりがついた。瞬間、
「ああああああああああああああああああああああ!」
 部屋の奥から、悲鳴ともとれる叫び声が聞こえ、俺の心臓は飛び跳ねた。
「!?」
「気にするな。ここのボスだ」
 男にそう言われたが、俺の心臓はこれ以上ないほど早く脈打っていた。
「なんで、なんで電気付けたのさ! アリア!」
「お客様です」
 先程の声の主、アリアが応えた。
「え? 何? いきなり?」
「はい。ゲンさんが連れてこられました」
 アリアは言うと、ではという声が聞こえ、ドアの閉まる音がした。
「お、もういいみたいだな」
 ゲンと言うらしい男は俺を奥へと案内した。
「ボス。この青年、ピエロ見えるらしいっスよ」
 そう、ボスと呼ばれる彼に説明しながら、ソファを指さし座って、と合図した。ソファに座ると一つの机が目に入った。そこに誰かいるらしいが、逆光のため顔は見えなかった。
「マジで? いきなり見つけちゃった感じ? すごいね。情報局の情報網って」
 俺には全く状況が理解できなかった。俺が茫然としていると、
「お茶です」
 とお菓子とお茶を出された。見ると、そこにはメイド服を着ているが愛想の欠片もない無表情な女性がいた。
「ああ。さすがだね、アリア。気が利く」
 彼女がアリアと言うらしい。
「ボス、そこの青年とゲンさんから話を聞き、彼に状況を説明すべきではありませんか?」
「そうだね。じゃあ、まず、僕の名前はセシル・ミカエリス。この事務所、って言っても仮の姿なんだけど。ま、それに関しては後で話すとして、ここのボスだよ。こっちは……」
 そう言って、セシルはメイド姿のアリアを指した。
「アリア、と申します」
 アリアは名乗り、一礼した。
「で、こっちが、」
「佐久間(さくま) 源外(げんがい)だ」
 俺をここに連れてきた男は見た目にそぐわず厳つい名前をしていた。
「こっちの紹介は以上だ。本当はもう一人いるけど、今はいないからまたあとで。さぁ、次は君の番だ。名前は? 歳は? ピエロが見えるって、本当かい?」
 俺はいきなり質問され、少し混乱したが順に応えた。
「俺の名前は鈴村和真。高校二年。ピエロは――見える」
 セシルの表情は読み取れないが、微笑んでいるようだ。
「そうか。君はピエロが一体何なのか、知りたいかい?」
 俺は、あまり考えずに返事をした。
「ふむ。正体を知ってしまうと後戻りできないよ? それでもいいかな」
 静かに時が流れる。誰もが口を閉ざし、俺の返答を見守った。
「それでも、いい。俺に起こっている事を教えてくれ」
 一週間前、俺の運命は変わった。俺の知らぬところで。
 そして、今日。俺の運命は動き出す。俺の意志で。
「それじゃあ、教えてあげよう。全てを、ね」