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SDSバスターズ~ピエロ退治します~

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<章=SDS対策本部ってなんですか!?>
  
此処はとある国のとある町のはずれ。そこには廃れた街に似つかわしくない真新しいビルが建っていた。
「……」
 ビルの中は真っ暗で、奥には机がありそこに一人の男が座っていた。
「ちょっと、ボス。どーかしたの?」
「……」
 ボスと呼ばれた彼は深刻な表情を浮かべ、沈黙を守っていた。 
「おい、どーしたよ。エリー」
 ボスに呼びかけていた少女の名はエリーと言うらしい。
「また、ボスが良からぬこと企んでる」
「また、か。アリアはどうした」
「買い物」
「マジでか? あー、どうすっかなぁ」
「ゲン、おっさんなんだから何とかして」
「おじさんがあの人動かせるかよ。ってゆーか、おじさんじゃねえよ! まだ二十八だ!」
「ノリ突っ込みウザイ。四捨五入すれば三十なんて、立派なジジイよ」
エリーはゲンと呼ばれる男性に向かって言い放った。
「お前だってなぁ、その歳でその体型は逆にまずいんじゃないかぁ?」
 ゲンはそう尋ね、ニタリと笑った。
「な!? 私は好きでこんな体じゃ……」
「何を騒いでいるのです? 部屋中の電気と言う電気を消して」
「「アリア!」」
 ドアの前に立ち、不可思議そうな表情をしている女性はアリアというらしい。
「いや、俺らじゃねーよ。ボスだ」
「はぁぁぁぁ」
アリアは表情を歪め、大きなため息を一つ。
「そうですか」
 そう呟き、隣にあった電気のスイッチを全て押した。
「ああああああああああああああ!」
 電気がつくと同時に、部屋の奥から悲鳴ともとれる叫び声が聞こえてきた。
「なんで! なんで電気付けちゃうのさ!? アリア!!」
 部屋の奥で悲痛な言葉をあげたのは、エリーとゲンがボスと呼んでいた人物であった。
「目が悪くなります」
「大丈夫だよ。僕は生まれてこのかた一度も視力が下がっていない」
「家具などに衝突し、負傷する恐れが出てきます」
「目が慣れれば大丈夫だ。ここはそういう者の集まりだろ?」
「ぶっちゃけ、迷惑なので止めてください」
「わぁ、ぶっちゃけたねぇ。仮にも僕、ここのボスだけど」
「そうですね」
「君、ほんと良い性格してるよ」
「ありがとうございます」
「褒めてないよ」
 二人はその後数秒、にらみ合った。その静かな戦いを止めるように、エリーが口を開いた。
「あのぉ、なんでいきなりボスは電気消したの?」
 ボスは一言応えた。
「かっこよかったから」
「「はぁ?」」
 エリーとゲンは気が抜けたような声をあげ、アリアは表情こそ変えないものの目には呆れた、という色がありありと見て取れた。
「だって、街外れに建つビルのまっ暗な部屋で物思いにふける僕。これほどかっこいいものはないと、僕はつい先ほど思いついてね。実践してみたところだったのさ」
 目を輝かせ語るボスを三人は何も言わず、冷たい視線を浴びせていた。いつもは気が合わない三人だが、このときばかりは同じことを考えていた。

(「「「この人、どうしよう……」」」)

 三人がボスへの対応に悩んでいるその時。電話のベルが鳴った。アリアはハッと我に返り電話へと出た。「はい。こちらセヴン・デドリー・シィンズ(通称:SDS)対策室アリア・マリゴールド。ご用件をお伺いします。はい。セシル・ミカエリスでしょうか。はい。おります。只今取次いたします」
 アリアは電話の相手に聞こえないよう手で押さえ言った。
「ボス。電話です。三番で繋がります」
「はいよ~。あ、その前に誰?」
「情報局本部です」
「うげっ。嫌だなぁ」
「早く出てください」
「はいはい」
 ボス、セシルは渋々電話に出た。セシルが電話に出ているその後ろでゲンが声をひそめて、アリアに尋ねた。
「なぁ、アリア。情報局本部ってことは、もしかして、そういうことだよなぁ」
「さぁ、私は内容を聞いていませんので判断致しかねますが、おそらくそうでしょうね」
 アリアは眉一つ変えず答えた。
「うぅ。また異動? 今度はどの国よ」
 エリーは頭をかかえうずくまった。
 それも仕方ない。彼らはこの国に来てまもなく半年といった所なのだから。ゲンも大きく息を吐いた。
「分かりました。では準備ができ次第出発します。では、情報ありがとうございました」
 セシルは電話を置くと。イスを回転させ三人の方を向いた。
「残念だけど、また異動だ」
 エリーはやっぱりー、と泣きそうな声で叫んだ。その悲痛な彼女の叫びを無視し、ゲンが応えた。
「はぁ、まぁ情報局から電話ってんで、大体予想はついてましたけど」
「で、今回は一体どういうミッションで、どの国に行くんですかぁ~」
「……それは、」
 セシルはそう言い言葉を濁らせた。
「……今回は“JAPAN”に向かう、ミッションは“SDSを見ることのできる人材をこの対策室に引き入れること”だよ」
 ゲンの顔が曇った? エリーはほんの一瞬だがそう思った。しかし、すぐにいつもの表情に戻ったので特に気にせず、尋ねた。
「 “JAPAN”……私、行ったことないわ。どんな所なの?」
 エリーの問いにセシルとゲンは無言になってしまい答えなかった。代わりに、普段は口を開かないアリアが口を開いた。
「私も一度も訪れたことがありませんが、ゲンさんの母国であり、世界一ツォーン出現率が高い国と聞いております」
「へぇ。ね、ゲン。あんた母国なんでしょう? 何か教えてよ」
「あ、ああ。そうだな。俺、まだ仕事あったから部屋もどるわ」
「もぉー! なんなのよ。答えになってないし。私を無視するなんて、おっさんのくせに!!」
 ゲンはエリーからの要求にもこたえず、心ここにあらずと言った様子で部屋へと帰って行った。
「じゃあ、僕も部屋へ行くけど、良いよね」
「はい。問題ありません」
「じゃ、しっかり仕事してねー」
「貴方に言われたくありません」
 セシルは先程の深刻な様子から打って変わって大声で笑い「ほんと、君は面白い」と言い部屋を出ていった。
「エリーさん、私も調べごとがあるので失礼致します」
「あ、わかったわ」
「では」
 一人残されてしまったエリーは、いつもと違う三人の様子を思い出していた。
「一体、何があるのよ、“JAPAN”って……」