SDSバスターズ~ピエロ退治します~
<章=バレンタインデーっていうと人が歓喜に踊り、無念に散るまったくもっていらない行事だよね>
それから一週間経った。
彼らは俺が感心し、思わず拍手しそうになるほど上手い具合に学校に溶け込んだ。ま、実際にはしないがな。
そして、異変が現れ始めたのはその二日後、バレンタイン一週間前。
学校内でSDSを見かける回数が一気に増えたのだ。
今までは、体育の時間に黄色、時たまピンクぐらいだったが、至る所でいろんな色が現れ始めた。セシルたちが危惧していた通りだ。
肝心のセシルたちもそれに気付かないはずがない。いつの間にか、隠れ集会場所となっていた科学準備室に今日の放課後も寄って行く。部活には一切触れていないが、陰でちゃんとやってるのよ? ユニホームも、もらってるし。何気スタメンだし。
「今から部活行くけど、俺に言っておきたいことは?」
ここはどこかのサロンか? セシルたちは過ごしやすいようにと、科学準備室(ここ)に大量の私物を持ち込んでいる。その一つであるティーセットでセシル(天野)は優雅にお茶を呑んでいる。彼は、ソファやテーブルなんかも持ち込もうとしたが、さすがに止められた。俺はその場に居合わせなかったのだが、その時もひと悶着あったらしい。
「やぁ、ずいぶん熱心だね。そんなに楽しいのかい?」
僕もやろうかな、と考えだしたセシル(天野)をアリア(菊野)が一蹴した。
「一分と持ちません。無理です」
俺もその意見に賛成だ。彼にはたぶん無理だ。簡単なチェストパスさえも難しいだろう。俺は顔に出さなかったが、エリー(愛理)ちゃんは盛大に頷いた。
「失礼な。君たちは僕のことを侮りすぎだよ」
顔を真っ赤にし、憤慨した様子のセシル(天野)は続けた。
俺は彼ら、主に彼の言葉を遮り尋ねた。
「俺は、今から部活に行きます。何か変わったことは?」
ゆっくり、大きな声で。
「ん? 特にないよ」
「了解。じゃあ」
俺は足早にその場を離れ、体育館へと向かった。
今日体育館で練習できるのは、男バスと男女バレー部だ。
体育館に着くとどの部活もまだ始まっていなかった。準備が出来た生徒たちが、ある程度の人数が揃うのを会話に花を咲かせながら待っていた。
「ねぇねぇ、今年は誰にあげる?」
「えー、やっぱ天野くんじゃない? 超可愛いもん」
「あ、でも鈴木先生も良くない?」
「あーいい!」
そう言って、女バレの生徒たちはどんどん賑やかになっていた。
これは俺が後になってアリアとエリーちゃんから聞いたものだが、実は俺と田口、山田も人気があったらしい。実に喜ばしいことだ。
一方、男子生徒はというと――
「今年はもらえっかなぁー」
「あんま期待しない方がいいだろ」
「あ、でも最近逆チョコ流行ってし、逆チョコありじゃね!?」
「ああ……。じゃあ、あげるなら誰よ?」
「俺は断然、菊野! なんか、明るくていい娘なんだけど、たまに冷たくなる時があるんだよなぁ。そこがまた、堪らん!」
す、鋭い。俺がびくびくしていても会話は続く。
「なんだ、そりゃ? 俺は一年の逢河さんだな! あのもろ大和撫子です、って感じ超タイプ」
その他にも若い保健の先生や、姐さんと呼びたい生徒ナンバーワンの常陸(ひたち)先輩、お嬢様と呼びたい生徒ナンバーワンの和泉など校内で美人と有名な女生徒の名前は一通り出てきた。
「しっかし、」
菊野、逢河、天野の転入生組がダントツで人気だなぁ。
集合! と大きな声がかかると、男子バスケ部の練習は始まり、次々と他の部活も練習を開始した。
作品名:SDSバスターズ~ピエロ退治します~ 作家名:夢見☆空