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SDSバスターズ~ピエロ退治します~

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<章=安心と兄貴>

 その晩、俺は兄貴と話しをした。
 少し前までは家族四人で暮らしていた。といっても、両親は共に働いており忙しい日々を送っていた。そのため家族がそろう事は少なかったが、それでもこの家で一番幼い俺が一人だけ、という事はなかった。
 ある日、二人ともぽっくりと逝ってしまった。何の前振りもなく、事故で。
 それ以来、この広い家に男二人で暮らしている。兄はまだ幼かった俺を気遣ってか兄貴は年ごろにも関わらず、友達と遊ぶこともなかった。ましてや女の子の陰など微塵も感じられなかった。
 一度子供心ながらに質問したことがある。
「おにいちゃんは、遊びに行かないの?」
 それは夏休みまっただ中の事だった。
「いいんだよ。俺は暑さに弱いんだ。日に当たると死ぬんだ」
 そう言って、冷凍庫からアイスを二つ取り出し、俺に一つ渡した。冬の日は、寒さに弱いと言っていたかもしれない。
 他にも兄が俺のために、さりげなく気遣っていた。だが、それはまた別の話だがな。
 俺が成長した今でも、俺たちはここに住んでいる。
 俺は風呂からあがり、リビングのソファで一杯やっている兄のもとへ。髪を拭きながら、兄の前の席へ腰をかけた。
 今日一日で兄貴がわからなくなった。唯一の肉親で、兄の事なら大抵はわかっていると思ったが、そうでないことを思い知らされた。暗闇に一人置いて行かれた。そんな気がしてきた。なんだかんだ、悪口を言い合っていても、兄だ。嫌いではないのだろう。
「なぁ、兄貴はSDSが見えるのか? なんで、セシルたちと知り合いなんだ? あいつらって何者なんだ? セシルたちってどういう人たち? ゲンと本当に同級生なの」
 俺は今日一日、いやここ数日で抱いた疑問、誰にもぶつけられなかった疑問を次々と口にした。
 兄貴は缶をゆっくりとテーブルに下ろすと、順に答えた。こっちが真剣なら、兄貴も真剣に答えてくれる。そういう人だ。
「俺は残念ながら、奴らは見えない。それと、俺はSDS対策本部に情報を渡す機関、情報局の人間だ。ま、SDSなんてものは他の奴らには見えないものだから、この機関は秘密裏に存在している。だが、世界中にある。その中の一つ、日本支部の支部局長が俺だ」
 何気に偉いんだぞ、ひれ伏せ、とニヤリと笑いながら言った。
はいはい、と俺は言った。秘密裏という事だから、家族の俺にも隠していたのか。
あ、分かったかも。時々浮かんだ疑問の答えが。二人で住むには広すぎる、この家をどう維持しているのか。以前、不安になって、引っ越さないのか? と尋ねた時、兄貴は、いーのいーの、と手を振って話を終わらせた。公務員の給料だけでは維持するのが大変であろうこの家を維持できていたのは、彼が裏でもう一つの仕事をこなしていたからであろう。
俺は未だに子供であることを思い知らされ、恨んだ。
 兄貴は続けた。
「情報局は世界中にいくつも存在するが、対策本部は一つしかいない。しかも、構成人数はたった四名。それが、あいつらだ。対策本部の人間になれる条件はただ一つ。SDSを目視できること。今は技術が進歩し、見れない人間でも特殊な装置を使えば大まかに発見することはできるようになったが、数や色など詳細を把握することはまだできない。情報局は、ある程度の情報を集め対策本部に報告する。危険だと彼らが判断した場合、動く。それが例え世界のどこであっても、というわけだ」
 ふ~ん、と俺は呟く。兄貴は、一旦席を立ち、冷蔵庫からコーラを持ってきた。
「あ、それ、俺の……」
「いろいろ教えてやんだ。これは報酬だよ」
 俺はしぶしぶ、コーラを飲む兄貴を眺めていた。
 コーラを一口飲んだ兄貴は、少し量の減ったペットボトルを眺めながらいった。
「で、あいつらがどういう奴らか、だが。ゲン以外はわからん。数回しかあったことがないからな。アリアに関しては今回初めて会った。最近本部に入れられたんだよ、彼女は。でも、悪い奴らじゃない、と思う。何しろ、誰からも信用されないような未知の相手と、たった四人で文句も言わず、投げ出さず、ずっと戦ってんだ。普通の人間にはできねーよ」
 それに、セシルさんとは話が合う、と言ってフッと笑った。
 確かに。初めてあいつらを見たとき感じた、不安。そして、それを誰とも共有できない孤独感。俺は、すぐに共有できたから良いものの、あのままだったらいずれ……。
「じゃあ、ゲンって一体どんな人? この前学校に来た時、女生徒が顔を見て騒いでいたんだけど、なんで?」
「それは、お前が自分で聞け」
 コーラ一本じゃ、ここまでだな、にやりと目を細め笑った。
 その晩、俺はここ二週間で初めて深い眠りに着くことが出来た。