小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【第五回・禄 】白い天使に懐かれた

INDEX|5ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

「遅いッ!!;」
京助がいきなり言った
「…うん…遅すぎだっちゃ」
沙織を抱いたまま緊那羅も言った
「誘拐か?;」
「物騒なこと言わないで頂戴ッ!」
呟いた京助に母ハルミが投げた蜜柑が直撃する
「俺探してくるわ」
京助が立ち上がると緊那羅に抱かれていた沙織が顔をゆがめた
「っふ…ふぇ…」
「……;」
京助が無言でまた座ると沙織の顔が元に戻る
「じゃぁ私が…」
今度は緊那羅が母ハルミに沙織を渡そうとするとまた沙織の顔が歪んだ
「……;」
緊那羅が無言で沙織を抱きなおすと何事もなかったかのように沙織が手を緊那羅に向かって伸ばし嬉しそうな顔をする
「…困ったわねぇ;」
母ハルミが苦笑いを浮かべた
「しゃぁない…捜査員に踊っていただくか…」
京助が手を伸ばして電話の子機を取った

「その代わり今度なんかおごれよ?」
掃除機の音が響く部屋の隅で中島は電話を切った
「誰から?」
口に飴玉を入れながら林檎が聞いて来た
「京助。ちょっと現場に行って来る」
中島が立ち上がり戸に向かって歩き出すと掃除機の音が止まった
「ゆーちゃん出かけるの? 今から?」
髪を一本にまとめた蜜柑が中島に近づいて聞いた
「あぁ悠助がまだ戻らないんだとさ。で京助も緊那羅(きんなら)も家から出られないから」
ジャケットを羽織ながら中島が説明する
「悠助ちゃんが? あれからずいぶんたってるよ? アタシも探そうか?」
蜜柑が捲くっていた袖を下ろして髪も解いた
「何? 悠助帰らないの? ってか京助はなんで家から出られないのさ」
林檎も話しに入ってくる
「子守」
マフラーを二回首に巻いて中島が答える
「は? 子守? 誰の」
林檎が再度中島に聞く
「お客さんがね置いていった赤ちゃん…沙織ちゃんって言うんだけどめちゃくちゃ可愛くってっ」
蜜柑が顔を緩ませて林檎に言う
「…はぁ~ん…そっかそっか」
蜜柑の言葉に林檎が頷きながら笑った
「…りん姉?」
そんな林檎に中島が声を掛ける
「柚汰京助ン家の電話番号何番?」
林檎が受話器を手に取った

ツー…ツー…という回線が切れた音しかしない電話の子機を持ったまま京助は何かを考え込んでいた
「京助?」
緊那羅が声を掛けるとゆっくりと子機を充電器に戻す
「怒られた;」
京助ははぁと溜息をついて肩を落とすと立ち上がって緊那羅を見下ろした
「俺が一番分かってることだろって言われた;」
「京助が?」
緊那羅が聞き返すと京助が戸に向かって歩き出した
「ふぇ…」
途端に沙織の顔が歪みはじめる
「悪りぃ緊那羅;」
京助が苦笑いを緊那羅に向けて部屋から出て戸を閉めると途端に響く沙織の泣き声と混ざって聞え始めた緊那羅の歌声を背に京助は玄関に向かった
「緊那羅しかいないの?」
靴を履こうと身をかがめた京助に聞き覚えのない声がかけられた
「…誰よ;」
目の前には少し赤くなった太腿
徐々に視線を上に向けていくと明らかになってくる摩訶不思議な格好
「アンタが悠助?」
京助より10cmくらい背の低い薄青銀色の髪に二つの玉のついた被り物をした人物がにっこりと笑っている
「馬鹿っぽい顔…俺の方が格好いいし可愛いし性格もよさそうなのに…」
京助の全身を見ながらその人物はかなり大きな独り言を言った
「どうしてこんなヤツがお気に入りなんだろうお二方は」
はぁと溜息をついて考え込んだ人物を京助が黙って見る
「…まぁいっか…とにかくアンタを何とかすればお二方はまた俺だけのものになるんだから」
一人で納得したその人物は京助に向かって満面の笑みを向けた
「【時】がどうのとか言っていたけど俺は知ったこっちゃないし? いなくなればそのうちお二方もアンタなんかすぐ忘れるだろうしね」
微笑むその人物の左手の中指についている玉が明るく光る
その光を見ていた京助の体が動かなくなった
目はどこかを見たままうつろで手は靴を履こうと踵に指を差し込んだまま動かない
そして京助を見下ろしていたその人物の左手の中指の玉からどうやって収納していたのか大きな三又の鈎(かぎ)が現れたがあまりの大きさに玄関の天井にぶつかって消えた
狭いなぁ」
天井を見上げてその人物が笑う
「一瞬でなくしちゃおうと思ったのに仕方ないか…狭い自分の家を恨んで?」
そう言いながら京助の首にゆっくりと手を伸ばしてきたその人物の顔は無邪気な子供の笑顔だった
「これでお二方は俺の元に返ってくるんだ」
「京助!!」
ダブルスピーカーで響いた自分を呼ぶ声と首根っこを思い切り引っ張る力で京助は我に変えった