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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・禄 】白い天使に懐かれた

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「…京助…緊ちゃん赤ちゃん産んだの?」
茶の間に入ってきた京助に悠助が真顔で聞いてきた
「産んでないっちゃっ!!;…っと;」
悠助の言葉に再び大声をあげた緊那羅が慌てて赤ちゃんを見ると緊那羅の髪を吸いながら寝息を立てていた
「沙織(さおり)嬢というらしい」
一通り手紙を読んだ京助がちゃぶ台の前に胡坐をかいて座る
「悠、ちょっくら社務所に電話して母さん呼んでくれ; マジでこれ捨て子だ;」
京助が大きく溜息をついて手紙をちゃぶ台に乗せた
「捨て子?」
電話の子機を手に持ったまま悠助が言う
「…捨て子って…」
緊那羅が自分の腕の中で眠っている沙織という名前の赤ちゃんを見た
「…育児に疲れましたとさ…緊那羅その女の人何歳くらいに見えた? 若くなかったか?」
京助が言うと緊那羅が頷いた
「…若い女の人だったっちゃ」
鞄を開けたとき小さな手が必死で探していたのはきっと母親だったのだろうと緊那羅は思った
「…ぅ~…;」
緊那羅が沙織という赤ちゃんを抱きしめて俯いた
「ハイそこ泣かない;」
「泣いてないっちゃッ;」
京助に軽く頭を叩かれた緊那羅がやや小さな怒鳴り声を上げながら上げた顔は半べそだった

スパーン!!!

「緊ちゃんが赤ちゃん持ってきたってどういうこと!?」
「っふぇえええ!! ふぇぇえええ!!!」
勢いよく開けられた茶の間の戸
息を切らせている母ハルミ
泣き出した沙織という赤ちゃん
「…母さんや母さんや…;」
京助がジト目で母ハルミを見た

「ええ…はい…は? …構いませんが…」
母ハルミが警察に電話をしている後ろで京助が沙織という赤ちゃんに哺乳瓶でミルクをやっている
「…上手いっちゃね京助」
慣れた手つきで哺乳瓶の角度を変えて飲みやすいように調節している京助を見て緊那羅が感心する
「まぁなー…悠の面倒とかしょっちゅう見てたし…やってみるか?」
京助が緊那羅に聞く
「僕やってみたい!!」
悠助が手を上げた
「ホレ、ゆっくり…そうそう」
京助から沙織を受け取り危なっかしい手つきで抱くと哺乳瓶の先を口につけた
「ぷ…ふぇ…」
沙織の顔が歪んだ
「ふぇえええ!! ふえぇえええ!!」
「えっ!; きょ…京助~!!;」
いきなり泣き出した沙織に悠助が困って京助を見た
「…ご指名有難う御座います;」
悠助の手から沙織を抱き上げて軽く数回ポンポンとおしめのしてある尻を叩くと沙織が泣き止んだ
「何で僕だと泣くのに京助だと泣かないのかなぁ…」
悠助が哺乳瓶を持ったまま頬を膨らませる
「…はいよろしくおねがいします」
電話を切った母ハルミが近づいてきた
「もしかしたら母親が戻ってくる可能性もあるから今日と明日ウチで預かってそれで来ないなら警察の方で迎えに来るって」
母ハルミが溜息混じりに言った
「ということでよろしくね京助。緊ちゃんと悠ちゃんも」
「はぁッ!?; 俺主体ッ!?;」
哺乳瓶を傾げつつ京助が反論的返事した
「沙織ちゃんも京助に懐いているしいいじゃない? じゃ母さん戻るから」
京助の反論を耳に入れてもすぐ反対から出したように母ハルミが茶の間から出て行った
「…マジかよ;」
空になりつつある哺乳瓶をほぼ垂直にさせて京助が肩を落とした

「…休みの日くらい休みてぇ…;」
雨が湿った雪に変わった頃正月スーパーの赤ちゃんコーナーに京助がいた
「京助~お菓子買っていい?」
悠助がポッキーをもってやってきた
「200円以内な」
紙おむつをカゴの中に放り込みながら京助が言うと悠助がポッキーをカゴに入れた
「…緊ちゃんは?」
姿が見えない緊那羅を悠助が探す
「あそこ」
京助が指差した方向はレジ会計の向こう側で商品を袋につめかえる台の傍
そこに緊那羅が立っていた
「…何してるのかな」
悠助が小走りで緊那羅の傍に駆け寄る
「緊ちゃん!!」
緊那羅の腰に抱きついて緊那羅を見上げたが顔が見えない
「悠助?」
少し顔を横に逸らすと緊那羅の顔が見えた
「緊ちゃんお母さんみたいだね」
「…嬉しくないっちゃ;」
沙織を背負い紐で前に固定している緊那羅が苦笑いを浮かべた
「意味なく似合ってるよな」
会計を済ませた京助が袋を持ってやってきた
「寒くないかー?」
京助が沙織を覗き込んで頬をつつくと沙織がわかったのかわかっていないのか手をバタバタ動かしてヨダレをたらした
「…ヨダレ…」
緊那羅と京助が同時に言った
「…京助ポッキー」
悠助が何だか面白くなさそうに言う
「あ? 家帰ってからにしろ」
京助が言うと悠助が頬を膨らませた