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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・禄 】白い天使に懐かれた

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「慧喜!! 京助から離れるっちゃッ!!」
「何してんのよッ!!!」
「ふぇぇええええええ!!!」
3つの声が重なって響き京助の頭に雪球が直撃する
「…あ…阿部さん…?;」
雪球が飛んできた方向に緊那羅が目を向けると石段の一番上から少し下がった所に顔を真っ赤にして息を切らせた阿部が両手を握り締めたまま慧喜と京助を睨んでいた
阿部はそのまま足早に京助を慧喜に近づくと思い切り二人を押した
「っ最ッ低!!!」
倒れた京助の胸倉を掴んで阿部が怒鳴る
「何で俺が怒鳴られないとあかんねんッ!!; 被害者だろ俺はッ!!;」
「ならすぐ離れればよかったじゃないッ!! 何長々やってたのさッ! 馬鹿ッ!!!」

パーンッ!!!

 というなんとも軽快な音が京助の右頬から発せられた
「痛てぇッ!!;」
右頬を押さえて京助が声を上げる
「…修羅場なんだやな…」
「ふぇェええ!!」
「大混乱なんだやな」
「ふぇぇええええええ!!!」
ゼンゴが沙織をあやしながら大きく溜息をついた沙織の泣き声と阿部と京助の怒鳴り声が響く少し暗くなってきた栄之神社の広場
「だからって何でお前にビンタされなアカンねんッ!!;」
京助が阿部に怒鳴る
「っそれは…そもそも! ああいうことは外で!! しかも彼女の前で他の人とすること自体最低ッ!!」
「どこに彼女がいるっつーんだ! どこにッ!!;」
「ふぇぇえええ!!」
京助が怒鳴ると沙織の鳴き声が一層大きくなる
「小さい子だっている前でッ!!」
阿部がゼンゴと沙織を指差して怒鳴り返す
「あ…阿部さん…あの…;」
「何ッ!!」
阿部と京助を落ち着かせようとして恐る恐る声を掛けた緊那羅が手を引っ込めた
「緊那羅~赤んボ泣き止まないんだやな;」
ゼンゴが緊那羅に泣き止まない沙織を押し付けた
「ふぇええええええ!!」
顔を真っ赤にして手をばたつかせて泣きまくる沙織を受け取ると緊那羅が一呼吸置いて歌いだした

「…いい歌なんだやな」
ゼンが尻尾をパタパタと振った
「和む歌なんだやな」
ゴも同じく尻尾を振る
決して大きな声で歌っているわけではないのに怒鳴っている声より泣き喚いている声より緊那羅の声は耳に届く
「さすが」
阿部に胸倉をつかまれたまま京助が言った
その京助の胸倉をつかんでいた阿部の手から力が抜ける
「…いい声してるだろ」
京助が言うと阿部が無言のまま頷いた
沙織の鳴き声もだんだんくすぶったような泣き方になりそして完全に泣き止んだ
「タンポポなんだやな!!;」
いきなりゴが足元を見て声を上げた
「コッチにはツクシが生えてるんだやなッ!!;」
ゼンも足元を指差して言った
「え…」
そして京助の視界を横切った薄い桜色の花弁
「桜…咲いてる…」
鳥居から境内までの通り道に植えられている桜の樹が花を開いている
「…うそ…」
阿部がフラフラと立ち上がって桜の樹に近づく
「…造化じゃない…よコレ…本当に咲いて…」
舞い落ちてくる花弁を手に受けて阿部が信じられないというように京助を振り返る
「…緊那羅さん?;」
京助が歌い終わった緊那羅を呼んだ
まるで栄之神社にだけ春が来た様に花が咲き緑が芽吹いている
「どういうことナンデショ?;」
立ち上がった京助が緊那羅の肩を叩くが緊那羅本人も驚いているらしく呆然としている
緊那羅に抱かれた沙織が笑い声を上げて緊那羅の髪飾りにじゃれている
「私…にもわからないっちゃ…; ただいつも通りに歌を…」
呆然と一点を見据えたまま緊那羅が呟いた
「これって…宝珠の…力?」
緊那羅が自分の腕についているほんのり緑色になった宝珠を見た
「ふぃ~だ~…ぷぷぅ」
おそらく赤ちゃん同士でも理解できないであろう意味不明な言葉を発しながら沙織が笑う
「お~ぉ笑ってる笑ってる」
沙織の頬を指でつつきながら京助も笑う
「…言っちゃなんなんだけど…」
「夫婦みたいなんだやな。両方オスだけど」
ゼンゴが緊那羅と京助を見て言った
「…なんだか……!?;」
背後にただならぬ気を感じたゴが振り向いて言葉を失った