【第五回・伍】スノー・スマイル
「ヘイ! タクシー!!」
片手を上げて待っていた坂田の手に南が走りながらタッチすると坂田も走り出す
「何してたんだこんなトコで;」
京助が坂田に聞く
「好きだぁ~ったのよあ~なた~♪」
「待ち伏せですな」
坂田の歌に浜本が突っ込む
「ピンポォン」
坂田が浜本を指差して笑った
「柴田さんから情報がいったと思われますが」
京助が走りながら言う
「そっちもピンポン!! で? 何がどうで必死こいて走ってるわけ? 体力向上ならこの後寒風摩擦でもするのか? 女子も含めて」
坂田が阿部と本間に手を振る
「いや…お前ありすちゃんって覚えてるか?」
京助が聞くと坂田が頷いた
「その子からの手紙が風にさらわれてしまいましてそれを探してるんで御座います」
京助に言われて坂田が南の背中を見た
「それであんなに必死こいてるわけか…体力ねぇのに無理してんなぁ…」
「ここはアレやるしかなかとでしょ」
やけに聞いたことのある声に振り向くとソコには中島
「…いつからいたよお前;」
浜本が阿部たちに並んで走っていた中島に聞いた
「本当影薄いよなお前…忍者になれるぞ忍者!」
坂田が笑いながら言うと中島が坂田の後ろ髪を引っ張った
「メンバーも揃いましたし…いっちょアレ、やっちゃますか…このまんまじゃ南がヤバイしな…おーぃッ!! 南ストーップ!!」
京助が南に向かって叫ぶと南が足を止めて振り返った
「ジャジャンジャン! ジャジャンジャン! チャラッチャッチャチャラチャラチャララン♪」
浜本の手作り即席BGMはマジンガーZのOP
「今こそ蘇れ!! 伝説の14.5人抜きを決めた我等が英雄たち!!」
正面に中島、右には京助、左は坂田そしてその上には南
「…騎馬戦じゃん」
本間がボソッと呟いた
「去年三年生をも打ち破った最強馬ここに復活!!」
坂田が言う
「…コケたら全員コケるよね」
またも本間がボソッと言う
「とりあえずリズムとスピードは【お猿のカゴ屋】でいきますか」
京助が言うと中島と坂田が頷いた
「では~…え~っさえ~っさえさほいさっさッ!!」
浜本が【お猿のカゴ屋】のリズムを歌い始めるとそれにあわせて小走りで走り始める
「ねぇ…アンタら恥ずかしくないの?」
阿部が京助に並んで聞いた
「何で恥ずかしいよ?」
京助が聞き返す
「だって街中でこんな…」
街中で騎馬戦の格好をして更にはBGMは【お猿のカゴ屋】
これで人の視線を集めないわけはない
通り過ぎる人も車も目を向けていた
「俺らは別に間違ったことしてるワケじゃねぇし? 恥ずかしいなら少し離れてろ」
京助が言うと阿部が足を止めて少し俯いた
騎馬の上に乗ったおかげで前より視界が広くなった南がピンクの封筒を探す
走っていたときには見えなかった低い塀の内側や街路樹の枝の間も見えるようになっていたがそれでも見つからない
「…空でも飛べたらなぁ…」
南がボソッと言うと京助がいきなり足を止めた
「だッ!!;」
「のッ!!;」
そのせいで中島が前につんのめり馬が崩れた
「何してんの」
本間が少し息を切らせながら崩れた馬に向かって突っ込む
「空…! 空だ空!」
京助が【空】を連呼する
作品名:【第五回・伍】スノー・スマイル 作家名:島原あゆむ