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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・伍】スノー・スマイル

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「…栄野と南だ」
「え?」
ローソンで雑誌を読んでいた本間がボソッと言うと隣にいた阿部が顔を上げて外を見た
「何してんのアレ; 雪中マラソン大会?」
雑誌を適当なところに押し込んで本間が外にでるとそれに阿部も続いた
「…ついていってみよ」
阿部が走り出した
「アンタ昼から塾じゃなかったっけ?」
本間も小走りで阿部に追いつくと一緒になって南と京助の後姿を追いかける
「いいのっ!」
阿部がどことなく嬉しそうに本間に言った
「京助ー!! 南ー!!」
名前を呼ばれて京助が振り返る
南にはもうそんな余裕はないのかただひたすら周りを見ながら走っている
「何してんの?」
本間が京助に追いついて聞いた
「簡単単刀直入に言いますと飛んでった宝探し」
「はぁ?」
京助が言うと阿部がわけわかんないというような声を返した
「南の大事な人からの手紙が飛んでいって…それを追ってるんだ」
京助が訂正して説明する
「大変じゃないそれ! アタシ達も手伝うよ!!」
阿部が走る速度を上げて南に並んで何か言っている
「…【アタシ達】ねぇ…」
本間が溜息混じりに言った

「なぁアレ…」
「あん?」
浜本がハルの腕を引っ張って道路の反対側を指差した
「あれって…」
ハルを風除けにしてバスを待っていたミヨコが一歩前に出て
「お---------ぃッ!!」
と大声で叫んだ
その声が聞えたのか聞えなかったのか見間違いかそうでないのかはわからないが道路の反対側を走っている四人は間違いなく同じ学校、しかも同じ学年で同級生…先頭を走るのは隣のクラスのヤツだということはわかった
「なにしてんだ?」
浜本が解けたマフラーを巻きなおして駆け出した
「…どうする?」
ハルがちらっとミヨコを見て言った
「…邪魔者が走り去ったのはいいけど…私も気になるッ!!」
そう言ってミヨコも駆け出すとハルも笑いながら駆け出した
分かれ道に差し掛かると南が足を止めて息を切らせ風向きを見てまた走り出す
「おい! 南!;」
走り出した南の肩を京助が掴んで止めた
「大丈夫かよお前;」
もはや息をするたびに喉がヒューヒュー音を立てている南の背中をさすりながら京助が言った
「…い…じょうぶ…ッ;」
そう言って笑ったのはいいがその後南が激しく咳き込んだ
「やだちょっと!; しっかりしてよ南!!;」
阿部も京助と同じように南の背中をさすった
「走るの嫌いな南がここまでになるまで追いかける…何追いかけてるんだ?」
後からついてきていた浜本、ハルとミヨコが追いついた
「手紙。ピンクでウサギのついたラヴレター」
京助が答えた
「ラヴレター!? 誰!誰からのさ!」
ミヨコがハルを押しのけて京助に聞く
「不思議の国のありすからの」
「はぁ?」
京助がニッと笑いながら言うと一同が【なにそれ】的声を上げた
「嘘じゃないぞ? いっとくけど。な? 南?」
京助が南の背中を軽くポンポンと叩くと南が頷いた
「そ…ありすからの…大事な手紙なんだ…さ」
胸をパスパスと叩いて呼吸を整えると南が小走りで走り出した
「…ピンクでウサギがついてるんだよね? …ハル! 私達はこっちいこ!」
ミヨコが南とは反対方向の道にハルを引っ張って行った
「手分けした方早く見つかるでしょッ!」
徐々に駆け足になりながらミヨコが叫んだ
「頼んだぞーッ!!」
浜本がマフラーを振り回して二人を見送る
「じゃ俺らは南について行くか」
京助が南を追いかけると阿部と本間、浜本も走り出す
雪が静かにゆっくり降り落ちてきた