ひとりぼっちの魔術師 *紅の輝石*
7.出会う、僕と君。
-初めまして、挨拶が遅れたね。
ここで出逢うのは初めてだけれど。
きっと昔。
きっと何処かで。
すれ違っていたんだよ。
「初めまして、…の君。」-
「…やぁ、初めまして」
「こちらこそ、初めまして」
生まれ出でた所は違っても。
僕と君は同じ。
変わらない存在。
違うのは、歩んだ道。
感じたもの。
知りえた記憶。
振り切られた腕。
嘘ばかり付く口々と裏切り。
他にもあるだろう、軌跡の数々。
「やぁ、これからどうするんだい?」
「君も、どうするの?」
「…決めてないよ」
「僕も、だ…」
二人揃って、肩をすくめる。
可笑しくなって、見合いながら笑いあう。
一通り笑って、そして。
違いが生み出した、僕の答え。
「蒼い君。僕は、世界を壊そうと思うんだ」
僕は、君の感じてきたものは知らない。
知りたくもない。
多分僕より幸せだったと言う事は、君の瞳から分かる。
態度から感じる。
言葉の音から伝わる。
どうして君ばかりが。
僕と同じ存在なのに。
本当は君がそうなるべきなのに…。
-でも、もうどうでもいいんだ。-
先に君が救おうとするこの世界を。
君ごと壊してあげるよ。
寂しさも、ちょっとした感傷もない。
大丈夫。
安心していい、怖い事も何もない。
僕も最期に追いつくから。
創り出されたものが導き出す、一つの答え。
それは、僕たちの「人生」の時計が動き出した証拠でもあった。
作品名:ひとりぼっちの魔術師 *紅の輝石* 作家名:くぼくろ