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ひとりぼっちの魔術師 *紅の輝石*

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6.天上の相異、地上の嗚咽。



-夜を燈す光は揺れて。
 彼方の記憶を呼び覚ます。
 脊髄を走る快感に似た感覚。
 世界の仕組みを知るその時。
 僕は目覚める。-


僕はこれまでに沢山の人の音を聴いてきた。
こんなにも世界は、嘘と終わりで構成されているのかと。
僕の胸は覆い尽くされる。
 
優しい手があったのも事実。
それでも、その手でさえも、僕を裏切り、それ以外のものも裏切っていた。
何を信じろと言うの?
何を信じればいいの?
僕の中にある叫びや疑問は、全て底の見えない闇に溶け込んでいく。
僕が存在する意味。
僕が作り出された理由。
考えても答えは導き出されない。

-唯分かっている事が一つ。-

僕は、世界の歯車の一つである、と言う事実。
何かを成し得る為に、与えられた力。
 
僕が所有するものは、きっとこの力。
僕の為に存在するのは、きっと僕が出す結論。
これから作り出す「未来」。
-さて、全てを始めようか。-
僕は星も月も照らさない闇の中から、腰を上げた。
何ともすがすがしい気持ちだ。
今まで在った靄は何だったのだろうか。
本当に靄だったのかさえも怪しく思う。
 
-不思議と笑いたい気分だ。-
焔が僕の体を包む。
今まで冷たく重いと感じていた僕の紅。

-何て暖かいんだ…。-

本当はこんなにも温度を持った、「僕自身」。

ふと、君が聞かせてくれた音を思い出した。

「君が選んだ道だから。僕がどうこう言う訳でもないけれど。本当に、それが「本当」なのかを疑うのも必要だよ」

と苦言を呈した。
空間にある本当なんて、「本当」と言う思いの強さが作り上げていくものだ。
その者にとっての「本当」。
世界に生きるための理由と意義。
創り上げる真実とこれからの時間。
それは、後から付いてくるものであって。
全て現在進行形で、同時に過去と忘却の彼方へ進んでいく。
 
空と一体化した地面を蹴って。
新しく、いや本当の僕を見つけ出して、世界の中へ溶け込んだ。
 
-こんなにも君に逢いたいと思ったのは、初めてだよ。-

今、時間を早められない事が、僕にはとても口惜しかった。
早鐘のように胸が鳴る。
もう独りの僕よ。
もう一つの装置よ。

-世界の中に溶け込め…。-