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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・四】履くモノ・履かれるモノ

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「キンナラムちゃ-----ん!」
南がぶんぶんと手を振って叫ぶとソレに気づいた緊那羅が小走りで坂を駆け下りてきた
「ラムちゃん…?」
阿部が呟くと坂田がほくそえみながら
「そ! 京助のイトコ (仮)の金名羊子で通称キンナラムちゃんだ」
と説明する
「…ふぅん…まぁそういうことにしておくわ」
本間が何か感づいているように言ったが阿部は何も言わなかった
「…お前寒がりのクセに何してんだ?;」
完全防備でやってきた緊那羅に京助が聞いた
「石段の雪払いしてたんだっちゃ; …私の仕事だし」
そういう緊那羅の手には竹箒が握られていた
「えらいわねぇラムちゃん鼻水まで垂らして」
南が緊那羅の頭を撫でた
「…はい」
緊那羅の目の前にポケットティッシュが差し出された
「鼻水拭いたら?」
阿部が差し出したポケットティッシュを恐る恐る緊那羅が受け取る
「あの…」
「アタシは阿部郁恵(あべいくえ)でこっちが本間香奈(ほんまかな)って言うの。文化祭とかセブンで会ってるよね? …羊子さん?」
【羊子(らむこ)】と呼ばれて緊那羅が止まった
その後ろで京助と3馬鹿が声を殺して笑っている

「っ…京助ッ!!;」
緊那羅が振り返って叫んだ
「だははははははは!!」
途端に大声で四人が笑い出した
「あ! 京助だ-!!」
石段の方から悠助が顔を出して走ってきた
「悠~!」
阿部が両手を広げて悠助を抱きしめた
「ちみッ子は役得ですなぁ…」
笑いすぎて流れた涙を拭いながら中島が呟いた
「阿部ちゃん~!」
悠助が阿部に抱きしめられたままピョンピョン跳ねる
「みんな何しに来たの?」
悠助がぐるり見渡して聞く
「スト-ブ取替えに来たんよ」
坂田が一息ついて言った
「ストーブ変えるんだっちゃ?」
緊那羅がどこか不安そうに聞いてきた
「あぁ。薪だとさすがに雪降ると寒みいから…安心しろ今よりあったかくなるから;」
【あったかくなる】という京助の言葉に緊那羅の顔がぱぁっと明るくなった
「あったかくなるんだっちゃ? 今より? もっと?」
緊那羅が尋問するかのように京助を問い詰める
「そうそう;…めっちゃ嬉しそうだなお前;」
箒とポケットティッシュを握ったまま緊那羅が嬉しそうに笑顔を浮かべた
「…阿部ちゃん?」
緊那羅と京助のやり取りを黙ってみていた阿部に悠助が声を掛けるとはっとして阿部が悠助に笑顔を返した
「…ちゃっちゃと取り替えようよ」
今まで黙っていた本間が仕切りの一言を言った