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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・四】履くモノ・履かれるモノ

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滑って仰向けに倒れた
「…だから待てって言ったのに…;」
仰向けになって倒れている矜羯羅に京助だけではなく制多迦と中島も近づいた
「雪の元塗ったばっかりだから滑るぞ」
「…早く言ってくれない?」
矜羯羅が制多迦に起されながら京助に言う
「いや…言おうとしたのにお前が聞かなかったんじゃん;」
京助が矜羯羅に返した
「…かじま人間タンカしたほうがいい?」
制多迦が中島に向かって言うと
「この場合は一人人間タンカ、いわゆるお姫様抱っこでいいと思うぞタカちゃんや」
中島が制多迦に言うと制多迦がヒョイと矜羯羅を抱き上げた
「お前等何コンビ組んでんだよ;」
いつの間にか親密度が上がっていたらしい中島と制多迦に京助が突っ込むと二人して親指を立てた
「僕自分で歩きたいんだけど」
抱き上げられて何だか何処となく不機嫌そうに矜羯羅が言う
「んじゃコレ履け」
頭の上に干してあった洗濯物の靴下を外して京助が矜羯羅に差し出した
差し出された靴下を摘むように受け取って上下左右から矜羯羅が靴下を見る
「…なにこれ」
片方ずつ手に持って矜羯羅が京助に聞く
「さっきも話してた靴下ってぇヤツ。足に履くんだ」
京助が制服のズボンの裾を少し捲くって靴下を矜羯羅に見せた
「ちなみにこんな使い方もできる!」
中島が矜羯羅から靴下を奪い取って両手にはめた
「パペットマペッッ!!」
中島が靴下をはめた両手を動かし始めると矜羯羅を下に降ろして制多迦が拍手する
「…何だかナァ; 凸凹コンビ成立か?」
やたら盛り上がっている制多迦と中島を見て京助が呟く
「京助煙突ー…って何しとん?;」
顔に煤をつけた南が煙突を抱えて茶の間に入ってきた
「中島君の一人パペマペ劇場In栄野家」
京助がヘッと笑いながら言う
「今日はしゃぶしゃぶらしいぞ!」
ドタドタという足音とともにやってきた坂田が大声で言った
「マジ!?」
京助が目を輝かせる
「さっきハルミさんと悠たちが買い物行ったんよ!」
「イェーイ!! 肉ー!!!」
坂田の言葉に中島も靴下をはめたまま両手を挙げて喜ぶとそれを制多迦が真似した
「何の騒ぎなのさ」
喜々としている3馬鹿を見て矜羯羅が京助に聞く
「今日の晩飯がしゃぶ…まぁ結構豪華なんで喜んでるんだ」
京助が笑顔で言う
「…ふぅん…」
視線を制多迦に移した矜羯羅がフッと微笑んだ
「本当…面白いね…こんな小さなことでココまで喜ぶなんて」
そして今度は京助に微笑みながら言う
「どんなに小さなことだって嬉しいから喜ぶ。あたりまえじゃん」
ソレに対して京助はニッと笑いを返した
廊下から鼻をかむ音が聞こえて京助が顔だけを廊下に出した
「寒いか? 緊那羅」
廊下で鼻をかんだティッシュを丸めていた緊那羅に聞くと緊那羅が大きく頷いた
「まだつかないんだっちゃ?;」
鼻をかみすぎたのかそれとも寒いせいなのか緊那羅の鼻の頭が赤い
「もうしばらくお待ちあれ」
京助が言うと緊那羅が溜息をついた