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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・参】ヘリカメ様

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海岸線を歩いて行くと数字の【7】の看板が見えてきた
暖房の為に片方が締切になっている反対の戸を開けて中に入る
「いらっしゃいませー」
数人いた店員が一斉に言った
「あったかいっちゃ~…」
中に入るなり緊那羅が安心したように呟いたのを聞いて京助が口の端で笑う
「あれ? 京助?」
雑誌コーナーから聞き覚えのある声で名前を呼ばれて京助が顔を向ける
「阿部?」
白い短めのコートにブーツを履いた阿部がファッション誌を開いて片手に持ったまま手を振った
「何してんだよ」
京助が阿部に話しかけた
「何って…塾の帰りだけど? アンタこそ何してんの? ってか…ほっぺ真っ赤じゃん; まさかと思うけど歩いてココまで?」
阿部が雑誌を閉じて京助を見る
「そのまさかだ」
「うっわ~;」
京助が何気に威張ると阿部が呆れ半分驚き半分の声を上げた
「…あ…れ? その子…たしか…」
視線を感じて緊那羅が顔を上げると阿部と目が合ってペコリと頭を下げた
「……イトコ…なんだよね?」
阿部が京助に聞く
「へ? …あ~…あぁまぁ;」
京助が緊那羅をチラッと見て生ぬるく答えた
「ふ~ん…そっか…」
緊那羅の全身を見ながら阿部がボソッと呟いた
全身を見られて緊那羅が少し後ずさる
「…で? 何でココまで歩いてきたわけ? こんな時間に…」
阿部が鞄を持ち直して聞く
「あ~ガムテープと母さんの菓子とか買いに来た」
京助が雑誌コーナーの向かいにあった日用品の棚からガムテープを手に取った
「あぁ…そろそろ時期だしね~…出たときはよろしく」
阿部が笑いながら言った
「まぁな~…一応は心に留めておいてやるよ」
京助も笑いながら返すと阿部の横を通って飲み物が並べられた棚に向かった
「…イトコ…か」
緊那羅が阿部の横を取ると小さくそう聞こえた様な気がして緊那羅が振り返ると阿部が戸を開けて外に出て行った

「…何してんだお前;」
会計を済ませてやや大きめのと小さな袋を一つずつ持った京助が店のある一点に立っていた緊那羅(きんなら)に声をかけた
「ここからあったかい空気が来るんだっちゃ」
そう言って緊那羅が嬉しそうに指を差した先には温風暖房機の吐き出し口があった
「…そうですか; …帰るぞ」
京助が戸口に向かって歩き出すと名残惜しそうに振り返りながら緊那羅も後を追いかける
店に入ろうとしてきた若い男を先に入れて店を出た
「さ~む~い~;」
緊那羅がまた嘆きの声を上げた
「ほらよ」
京助が小さい袋を緊那羅に差し出して歩き出した
「…この袋あったかいっちゃ…?」
両手で袋を受けとった緊那羅が袋の温度に驚く
「肉まん。冷めないうちに食うなりなんなりしろ」
お菓子や牛乳の入った袋を右手から左手に持ち替え京助が緊那羅に言った
「カイロにするもヨシ! 食っても美味い! 最高じゃん肉まん」
ニッと笑って京助が歩き出すと緊那羅が小走りで隣に並ぶ
「コレ…」
緊那羅が袋から肉まんを取り出した
「火傷すんなよ」
まじまじと湯気のたつ肉まんを見ている緊那羅に京助が言う
「京助のは?」
袋に入っていたのは肉まん一つだった
「俺はいいよって…何;」
京助が顔を向けると半分に割れた肉まんを目の前に差し出された
「半分こだっちゃ」
半分の肉まんを差し出して緊那羅が笑う
「…さんきゅ」
袋をまた持ち替えて京助が半分の肉まんを受け取って口に運ぶのを見て緊那羅も肉まんを齧った