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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・参】ヘリカメ様

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「うぇえ~; 寒いっちゃ~;」
緊那羅が外に出るなり嘆いた
「お前な…;これからもっと寒くなるのにこんくらいで寒い言うなよ;」
石段を降りながら京助が緊那羅を振り返る
「う~;」
パーカー一枚羽織っただけの京助に対し緊那羅はマフラーも巻いて挙句手袋までしている
「私寒いのは苦手なんだっちゃ;」
早足で京助に追いついて隣を歩きながら緊那羅が言った
「まだ今日はあったけぇ方だぞ?」
「これで!?;」
京助の言葉に緊那羅が信じられないという声を上げた
「だってまだ息がそんなに白くねぇし」
京助がは-っと息を吐くと少し白くなってすぐ消える
「…私…凍死するかもしれないっちゃ…;」
緊那羅が立ち止まって遠い目をしながら呟いた
「しねぇしねぇ;」
京助も立ち止まり【それはない】とばかりに顔の前で手を横に振った
「まぁ…寒いならパッパと買うものかって帰るべし」
緊那羅が京助の言葉にのらりくらりと足を動かす
「…しゃきっとしろよしゃきっと; …ったく;」
そんな緊那羅の手首を掴むと京助は大股で歩き出した

田舎町の正月町は午後八時ともなるとメインストリートといえど車も人も滅多に取らない
そして大抵の店は七時かそこらでシャッターやらカーテンを閉めている
「…遅かったか;」
近所の小さな商店はもうカーテンが閉まっていた
時間は午後七時と十五分を少し過ぎた所
「…しゃかねぇ…セブンまで行くか…今からじゃスーパーも閉まるだろうし」
京助が溜息をついて向きを変えると歩き出す
「ちょっくらセブンまで行って来るって母さんに伝えといて」
後ろをチョコチョコとついてきていた緊那羅に言う
「え…伝えとけ…って…?」
緊那羅が立ち止まって京助に聞いた
「お前寒いんだろ? 先帰ってろ。悪かったな連れ出して。帰って風呂でも入ってあったまってろ」
そう言って京助が走り出した
「あ! ちょ…っ;」
遠ざかっていく足音を緊那羅が慌てて追いかける
「京助!;」
「うぇっ;」
緊那羅が京助のパーカーのフードを掴んだ
「何だよ;」
掴まれて伸びたフードを軽く直して京助が聞く
「私も行くっちゃ」
「は?; だってお前…」
「行くんだっちゃッ!」
声を上げた緊那羅の息が白く吐き出された
「散々寒がってるのに…変なヤツ;」
京助が頭を掻きながら少し早足で歩き出すと緊那羅もそれに合わせて歩く