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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回】 垂れ流しからの恩恵

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「…【式】とは【式神】という一種の術のようなものだ」
迦楼羅が話し出した
「そしてコイツ等はその【式神】の【前鬼】と【後鬼】であろう」
緊那羅の膝で寝ている二匹に視線が集まった
「【前鬼・後鬼】は術者の命によりその者の前と後を守るものだ…が」
迦楼羅がふと考え込んだ
「…一体誰が…」
迦楼羅のその呟きからしばらく沈黙が続いた
「…京助」
乾闥婆が京助に声をかけた
「…貴方が生まれる前からこの二匹はいるんでしたよね?」
乾闥婆の言葉に京助が頷く
「…ならばハルミさんに聞けばわかるのではないですか?」
乾闥婆の言葉に今度は全員が大きく頷いた

「…なんだこの修学旅行のお泊りのように敷かれた布団は;」
ゼンとゴが乗っていて動けない緊那羅を残して京助達は母ハルミがいると思われる明かりのついている部屋にやってきた
そこで見たものは襖を全部開いて繋げた部屋に敷かれた5組の布団
「何って…見ての通りでしょう」
母ハルミが腰に手を当てて言った
「今日はもう遅いからかるらんとけんちゃんも泊まっていきなさい?」
京助の後ろにいる迦楼羅と乾闥婆に母ハルミが言う
「え…いやワシ等は…;」
「かるらん!! けんちゃん一緒に寝よー!!」
丁重に断ろうとした迦楼羅の前に悠助が万歳をして布団にダイブする
「朝方は冷えるから後からヒーターもって来なさい」
布団の上で転がる悠助を見て微笑んだ母ハルミが廊下に出た
「あ…母さん!」
京助が呼ぶと母ハルミが振り返る
「なぁに?」
「…ゼ…じゃない;コマとイヌっていつからウチにいるんだ?」
京助が聞くと母ハルミは一瞬目を大きくして驚いたような表情をした
「…ずっと前からよ? …コマとイヌ…ゼンちゃんとゴちゃんだったわね…あの子達はアンタの父さんが連れてきたの」
ゆっくりと母ハルミが言った
「アンタは覚えてるかどうかわからないけどねアンタの父さんにはちょっと不思議な力があったの。よくその力でアンタをあやしていたのよ」
京助は黙って母ハルミの言葉を聞いていた
「…あの子達はウチの神社をずっと守っていた前の狛犬なの」
母ハルミのその言葉に迦楼羅が反応した
「…狛犬に式神を入れたのか…」
ボソッと迦楼羅が言うと母ハルミが頷いた
「自分に何かあった時…代わりに京助と悠ちゃんを守るようにって…でもまさかあんな可愛い姿になれるなんて知らなかったわ。母さんびっくりしちゃった」
母ハルミが笑う
「…さ…もう九時になるわ。お風呂入って寝なさいね」