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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回】 垂れ流しからの恩恵

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畳に風が当たるように固定された栄野家の二台のドライヤーが ンゴーっ という音をさせて温風を噴出し濡れのひどいところを乾かしていく
比較的水害の少ない所に敷かれた新聞紙の上を悠助とゼンゴが走り回りその後には染み出した水であしあとが新聞紙に残る
「コラ!! 悠そっち蛍光灯割れてんだからあんまいくな!」
京助が吹っ飛んだ外戸をはめながら悠助に向かって叫ぶ
「ちょい緊那羅そっち先に掃いてくれ」
外戸をはめて身を乗り出し和室内を掃いていた緊那羅に蛍光灯の残骸が散らばるところを指差していった
「わかったっちゃ。ホラ悠助もゼンもゴも危ないっちゃ」
ちり取と箒でお子様三人を隅に追いやる
「つまんないんだなや」
ゼンが口を尖らせる
「んなら手伝えッ!!;」
京助が怒鳴った
「遊びたいお年頃なんだやな」
ゴが笑いながら言うと
「なー?」
ゼンとゴがハモって言った
「僕も手伝いますよ」
廊下から乾闥婆が和室に入ってきた
「あれ? 迦楼羅は…まだ風呂だっちゃ?」
緊那羅が聞く
「ええ…まだ浸かっています」
いいだけ水を吸った新聞紙を集めながら乾闥婆が言った

「…本当にすいませんでした」
乾闥婆の言葉に一同動きを止める
「まだまだ…僕も子供ですね」
集めた新聞紙を近くに置いてあったゴミ袋に入れながら乾闥婆が小さく言った
そしてまた新聞紙を集めようと顔を上げると目の前には二つの顔
「…な…んですか?;」
乾闥婆もさすがに驚いたらしく言葉が詰まってしまった
「ゼン等は栄野を守りたいんだやな」
「青いのは馬鹿でっかい力のヤツを守りたいんだなや」
ゼンとゴが言った
「…は…ぁ」
乾闥婆がわけもわからず頷くと
「ごめんだったんだやな」

ゴス

ゼンとゴが頭を下げて謝り二人の頭が乾闥婆の頭に当たった
「…痛いんですけど。角が」
二人の角が乾闥婆の額に赤く二つの点を残した
「けんちゃん緊ちゃんとおそろい~!」
悠助がソレを見て言うと京助が乾闥婆の額を覗き込み緊那羅を見てまた乾闥婆を見、
「ブッ」
と噴出した
「失礼ですね」
乾闥婆の必殺技といてもいい容赦ないチョップが京助に直撃した

「そいや緊那羅も栄野守りたいとかいってたんだなや?」
ゴが言うと揃って緊那羅を見る
「…じゃぁ緊那羅は栄野のワキをまもるんだなや!」
「は!?;」
ゼンの言葉に緊那羅が声を上げた
「前後はゼン等が守ってワキは緊那羅が守るんだなや! 完璧なんだなや!!」
「ナイス考えなんだなや!!」
ゼンゴが勝手に【栄野お守りポジション】を決定した
「…お守り戦隊マモルンジャー…」
京助がぼそっと呟いた
「戦隊物には人数足りないんだなや」
ゴが言うと
「あの馬鹿でっかい力のヤツも入れてしまっていいだなや」
ゼンが言う
「じゃぁここの青いのも入れるんだなや。おお! 丁度五人なんだなや!」
ゴが目をキラキラさせた
「…勝手に組み込まないで下さい」
乾闥婆が溜息混じりに言った

「…なぁ話変えていいか?」
京助が言う
「…何だっちゃ?」
京助に視線が集まった
「…知ってるか? 鶏肉って茹でるとカプチーノみたく灰汁がでるんだ」
「…何ですかそのカプチーノって…」
京助の言葉に乾闥婆が突っ込む
「…まぁいいや;単刀直入に言いますと…」
ネタをわかってもらえなかった京助が手をヒラヒラさせた後人差し指を立てた
「…のぼせてんじゃねぇ?」
立てた人差し指を風呂の方向に向けて京助が言った