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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回】 垂れ流しからの恩恵

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外戸が外れて(というか吹っ飛んで)いる縁側
割れた蛍光灯
水のしみ込んだ畳
庭に開いた穴からいまだちょろちょろと流れている地下水と思われる水
「…落ち着いたか?」
そう言った迦楼羅の視線の先には座り込んで顔を下げている乾闥婆がいた
迦楼羅の服はずぶ濡れで髪からも水滴がポタポタ落ちている
乾闥婆の周りを飛んでいた布は迦楼羅の手の中にあった
「…すいません…でした」
乾闥婆が小さく言った
「…気にするな。ホラ、腕を出せ」
迦楼羅が言うと乾闥婆は黙って腕を出した
乾闥婆の服の袖を引っ張って迦楼羅が手首に布を巻く
キュッと軽くしかし解けない位の力で止めるともう片方も同じように止める

「迦楼羅…」
布を巻き終えた迦楼羅に乾闥婆が声をかけた
「何だ」
ぬれている前髪が顔にくっついて邪魔くさいのか手で後ろにやって迦楼羅が返事をした
「…僕はもう…居場所を失いたくないんです」
迦楼羅が巻いた手首の布を掴んで乾闥婆が言った
「僕の居場所は…貴方の隣です」
俯いたまま言った乾闥婆の頭を迦楼羅が撫でた
「…あぁ…そうだな…」
乾闥婆が迦楼羅の服の裾を掴むと水が搾り出された
「…あの二匹に実態を保たせる力くらい…竜田揚げを食べればすぐだ」
迦楼羅が乾闥婆の頭を撫でながらしゃがんで
「…お前には本当世話ばかりかけているな」
そう言った迦楼羅に乾闥婆が顔を上げる
「ワシの前で強がるな乾闥婆」
乾闥婆の大きな目には涙が今にも流れそうなくらい溜まっていた
「貴方の前だからこそ強がるんです…ッ」
乾闥婆の目から涙が零れた
「ワシの前で弱音を吐かずして誰の前で吐くのだ!! たわけ!」
迦楼羅が怒鳴って乾闥婆の頭を抱き寄せる
「子供扱いしないで下さいッ!!」
乾闥婆が暴れて離れようとするが迦楼羅は手を離さない
「僕は…っ!! 貴方の隣を歩いていたいんです!!」
そう言った乾闥婆を迦楼羅は更に抱きしめる
「…っ離して…下さい…ッ…」
抵抗する力が弱くなり乾闥婆の肩が小さく震えだした
そんな乾闥婆の頭を迦楼羅が撫でると小さく嗚咽が聞こえ始めた

ぐぅうううう~…

「…乾闥婆」
迦楼羅が乾闥婆に声をかけた
「…まったく…貴方という人は…」
体に似合わない大きな腹の虫の音をさせた迦楼羅に乾闥婆が溜息をつきながら目が少し赤いだけでいつもと変わりない顔で迦楼羅を見た
「うっわ; どーすんだこの穴!!;」
戻ってきた京助が庭の穴を見て言うと
「…片付けないと…だっちゃね;」
和室中心にしっちゃかめっちゃかになってる様を見て緊那羅が言った