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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第四回・参】恋のタコヤキ合戦

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「この勝負なんの為にしてるわけ?」
矜羯羅のその言葉に京助が勢いよく肩を落とした
「…あのな;」
机に手をついて起き上がった京助が隣でタコヤキを一心不乱に口に運んでいるハルを指差した
「…コイツの」
そして次に屋台の横で二人の勝負を見ているミヨコを指差す
「…コイツにとってそこにいるのが大切なものなんだ。コレはソレをかけた戦いなわけよ。OK?」
「ふぅん…」
矜羯羅がハルとミヨコを交互に見て溜息をついた
「僕の大切なものがなくなるわけじゃないからどうでもいいんだけど…勝負に負けるってのは嫌だからね」
爪楊枝に刺してあったタコヤキを口に入れて矜羯羅が言った
「…本気でいくから」
そういうと山盛りてんこ盛りのタコヤキが乗った皿を口元に運んだ
そしてまたも沸き起こる歓声
一瞬で消えたタコヤキの山
そして口の端を手の甲で拭って矜羯羅がハルを見て微笑んだ
「別に君の大切なもの欲しいわけじゃないんだけど…勝負だからね…僕が勝たせてもらうよ?」
そんな矜羯羅を見てハルがタコヤキを一気に口に押し込んだ
「だから…爪楊枝いらねぇじゃん;」
京助が矜羯羅の爪楊枝を指差して言った

【保健室】
廊下に突き出してある微妙に緑かかった黒い板にはそう書いてあった
「馬鹿騒ぎするからよ。反省なさい!」
胸に【保健・山本】というネームバッチをつけた中年の女教師が水の入ったコップをハルに差し出した
「すんません;」
白いベッドの上でハルはそのコップを受け取ると手の中にあった錠剤と一緒に水を飲んだ
「文化祭で気分が盛り上がるのはわかるけど…体壊したら元もこのないでしょう? 一体何個その腹にタコヤキが詰まってるんだか…」
山本先生が溜息をつきキュルっと音をさせて椅子に座りペンを走らせる
「単なる食べすぎ」
そう言ってペンを置きハルに【来室者症状票】と印刷された用紙を差し出した
「ご迷惑かけました」
「本当だよ」
ハルが戸口で言うと山本先生が笑いながら言った
「ひっでぇ優子ちゃん;」
「山本先生だろ!! …まったく」
名前で呼ばれて山本先生が声を上げたがハルはそのまま戸を閉めた
「よー」
ふと声をかけられて顔を上げると坂田と京助…屋台チームの面子がチャッと手を上げた
「大丈夫か?」
京助がハルに近づき腹をさするとハルは腰を引いて苦笑いを浮かべた
「格好悪りぃから慰めんなよ?」
ハルが引きつり笑いのまま言うとミヨコが京助を押しのけてハルの前に立った
「ばっかじゃない!?」
大きな目を吊り上げてミヨコが怒鳴った
「廊下では静かに!!」
保健室の戸が開いて山本先生が怒った
「す…すいやせ~ん;」
浜本が顔の前に手を立てて謝るとそそくさとその場を離れて教室に戻った
「…静粛に穏便に和やかに」
坂田がミヨコを宥める
「…アイツは?」
ハルが誰もいなくなってあとは屋台の解体だけとなった馬鹿騒ぎの後の教室をぐるッと見渡してまた正面を見ると左頬に平手打ちを食らった
「だから穏やかにってゆーたろが!! ミヨッ!!;」
坂田がミヨコの腕を掴んで本間がハルとミヨコの間に割って入りミヨコを止める
「矜羯羅ならいねぇよお前がぶっ倒れたあとで悠達と先帰った」
京助が言うとハルが左頬を押させえながら俯いた
「負けたんだ俺…」
「まだ言う!?」
ハルがボソッと呟くとミヨコがまた手を振り上げた
「ノーノー!!; 暴力反対!暴力反対!!;」
ソレを浜本と坂田そして本間が止める
「アンタなに考えてるの!? なんであんなことしたの!?」
「おーちーつーけーって;」
怒鳴り散らすミヨコに京助が言った
「元はアンタが素直にならないから悪いんじゃない」
さっきまで黙っていた阿部が言うとミヨコが振り上げていた手を下ろした
阿部がハルに近づきハルの腕を引っ張ってミヨコの前に押し出した
「とっくの昔にカップル成立してたはずなのにこのガチャが変なところで乙女するもんだからこんなことになったんでしょ」
ミヨコ以外には阿部がなにを言っているのかわからなくて顔を見合わせる
「不安だったんだもん」
ミヨコが俯いた
「だって!! だって不安だったんだもん!! ハルがあんまり好きって言ってくれるから…ミヨは…」
言葉に詰まったミヨコの頭を阿部が撫でる
「…え~…ハイ?;」
坂田が手を上げた
「…つまりは両思いだったってこと」
阿部がさらっというと一同が固まる
「このコは天邪鬼だから。ハルがすこたま好き好き言ってくるのが本当なのかわからなくなってたわけ。それを隠すため変な意地はっちゃってたんだよね?」
阿部がフォローするとミヨコが鼻を啜って頷いた
「…ねるとん…」
「古ッ;」
浜本がぼそっと呟くと京助が突っ込んだ
「でもミヨはき……名前のいいづらいアイツを…」
ハルが小さく言うと阿部がハルを見た
「憧れと好きとは別モンでしょが阿呆」
その言葉にミヨコが頷く
「言えるね?」
阿部がミヨコの耳元で囁くとミヨコが目をこすって顔を上げた