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夜空の漂流船

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 翌週、ホテルでコーヒーを飲んで待っていた聡美さんに、僕は別れを切り出すつもりだった。といっても、今まで辛うじて成立していた不安定な関係、いつか消えてしまうものが実際に消えてしまう、そのタイミングが来ただけ、そんなつもりだった。
 いつもと同じとりとめもない会話をしているときに、少しの沈黙の後に里美さんが言った。
「そういえば、忘年会のときに、桜井さんといい感じだったじゃない」
「そうですね、彼女、いい娘(こ)ですよね。永田さんのこと尊敬してるって言ってましたよ」
「知ってるわよ。後輩の憧れの存在でいるのも、けっこう大変なんだから」
聡美さんは笑って言う。それから、また少し黙ったあと、
「桜井さん、明るいし、素直で、真面目で、本当にいい娘なんだから」
笑ってはいたけど、少し震えた声で聡美さんは言った。


作品名:夜空の漂流船 作家名:麹町郵便局