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夜空の漂流船

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 翌日は、雪のちらつくとても寒い日だった。
 その日は、会社全体での忘年会があった。全体といっても、小さな会社なので高校のクラスひとつ分くらいの人数だ。

 三次会のバーラウンジで僕がトイレから戻ってくると、桜井さんが隣の席に座っていた。彼女はことし営業課に入ってきた新入社員だ。
 見積もりに間違いがあって課長に怒鳴られて泣いていたとき、聡美さんに抱きついて頭をなでてもらっていたことを思い出す。そのときの聡美さんは、失恋した妹を慰めるお姉さんみたいだった。

「青木さんって、まさに永田さんの右腕みたいな感じですよねぇ」
「そう見えるの?永田さんと比べたら僕なんてぜんぜんだよ」
「私、永田先輩のこと尊敬してるから、青木さんみたいになりたいんですよ」
といって、自分のワイングラスをじっと見つめる。酔っているのか、目が少し潤んでいる。僕みたいになってもしょうがないよ、と答えると、
「もちろん青木さんも尊敬してます。青木さんの右腕になれたら、私うれしいです」
と、少し照れた笑顔で彼女が言う。悪い気はしないな。

 それから、青木さんって彼女いるんですか?と聞かれたので、今はいないよ。と答えた。

 帰りの電車の中で、彼女の控えめな笑顔を思い出して、ほんのり暖かい気分だった。今度、映画にでも誘ってみようかな。と、窓の外を見ながら考えた。


作品名:夜空の漂流船 作家名:麹町郵便局