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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第四回】わき道・寄り道・帰り道

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チャ~ンチャンチャンチャチャチャラチャチャチャララ~…♪

いきなり町中に鳴り響いた『夕焼け小焼け』の音楽にタカちゃんの肩がビクっとなった
「あ、愛の鐘だ…もう5時なんだ~…」
「…いの鐘? びっくりした…;」
少しノイズが入って聞こえる『夕焼け小焼け』の音楽
【愛の鐘】とは児童生徒の帰宅時間の目安になるようにと正月町の教育委員会が実行しているもので秋~春は午後5時、夏は午後6時になると毎日流れる音楽のことだが突然鳴り響くからいくら聞きなれていてもボーっとしているときはかなりビビらされる迷惑なんだか役に立っているんだかよくわからないモノだ
「…んなの? コレ」
タカちゃんが悠助に聞いた
「【愛の鐘】って言ってねコレが鳴ったら家に帰らないといけないんだ~…でも…」
悠助がチラっとタカちゃんを見る
「…大丈夫だよ!! タカちゃんの探してる人見つけるから! ちゃんと見つけてから帰るから! 僕ちゃんと謝るから許してくれるから大丈夫だからね?」
『大丈夫』と連呼して悠助が言った
「…うすけ…」
タカちゃんが悠助をじっと見た
「…うすけ…足踏んでる…」
「え?」
タカちゃんの指差した足元を見ると力説のあまり前にちょっと前進していたらしい悠助の靴がタカちゃんの足の上にあった

「お…【愛の鐘】」
ノイズ混じりで聞こえてきた【愛の鐘】を聞きながら京助が春雨サラダに手を伸ばすと
ペシっという音と共に額に痛みを感じた
「やめてください。まったく行儀が悪い」
ペシペシペシと同じところを乾闥婆がしゃもじで連打する
「一回叩きゃいいだろが!! 連打するな連打!!;」
京助がしゃもじを払って言い返した
「一回言っても聞かなかったじゃないですか。コレで四回目ですよ? やっぱりコノ頭は空ですか」
乾闥婆がピシャリと言う
「けんちゃんの言う通りよ京助」
母ハルミも京助の頭を軽く小突いて冷蔵庫を開け何かを探し始めた
「…んだよ二人して;」
二人に言われて京助は椅子に腰掛けて分が悪そうな顔で頬に手をつく
「腹減ってるんだから少しくらいいいじゃんか」
京助がブツブツ文句を言った
「何も手伝わないで文句だけ一丁前に言わないでください」
乾闥婆がにっこり笑いながら振り返った
「助かったわ~…ありがとうねけんちゃん」
母ハルミがレタスをはがしながら乾闥婆にお礼を言った
「いえ僕が無理を言って教えてもらうんですからこれくらいは」
乾闥婆が頭の姐さん巻きを外しながら母ハルミにも笑顔を向ける
同じように見えるがさっき京助に向けたものとはどこかが違う
「もう少しで晩御飯だから我慢しなさい」
「ヘイヘイ…」
母ハルミの言葉に京助が悪たれた返事をすると

スパーン!!!

ペシっ!!
「返事はハイ! と一回ッ!!」
気持ちいいくらい同時に京助はこの言葉と母ハルミからはレタスの葉、乾闥婆からはしゃもじスィングをそれぞれ後頭部と顔面にくらった
「…にしても悠ちゃん遅いわね…」
母ハルミが壁に画鋲で止めてある時計に目をやった
「…しゃーねーなぁ…; いっちょ怒られに行きますか;」
京助がレタスの葉を咥えて椅子から立ち上がった
「僕も行きます」
乾闥婆がエプロンを外し捲くっていた袖を下ろした
辺りはもう結構薄暗くなっていた
顔面に投げつけられたレタスに乾闥婆にチョップをくらいながらも根性で春雨サラダを巻いて口に詰めた京助は玄関に向かった
「ほら!! 汁たれてるじゃないですか!! 汚いですよまったく…垂れ流すのは馬鹿だけにしてください」
「ふふへーッ!!(うるせー!!)」
口に突っ込んだものの端から汁をたらして歩く京助に乾闥婆が声をあげる
ギャーギャー騒ぎながら玄関まで来ると緊那羅がもうサンダルを履いて待っていた
「…京助口の端に春雨ついてるっちゃ;」
緊那羅に言われて手の甲で口を拭うと床に春雨が一本落ちた
「汚い」
乾闥婆のチョップが京助の後頭部にのめりこむのを見て緊那羅が苦笑いをする
「バコバコ叩くなっつーのッ!!;」
京助が後頭部を抑えつつ怒鳴る
「ほら京助; 早く悠助探しに行かないと…暗くなってきたっちゃ」
ギャーギャー乾闥婆に抗議している京助に緊那羅が声をかけ宥めていると乾闥婆がふいに玄関の引き戸をガラリと開けた
「…何してんだ?」
突然の乾闥婆の行動に京助と緊那羅がきょとんとする
「…まったく…意地っ張りなんですから…」
乾闥婆(けんだっぱ)が溜息を吐きながら言った一言に緊那羅と京助は顔を見合わせて首をかしげた
「…ほら、いきますよ」
きょとんとしている二人を振り返ると乾闥婆は外に出た