【第四回】わき道・寄り道・帰り道
「うるさい!!」「うるさいですよ!!」
名前をちょっと呼んだだけで怒鳴られ二人はビクッとすくみあがった
乾闥婆と矜羯羅はまたにっこりと笑い合うと
「君のところの鳥さん躾がなってないみたいだね」
「貴方のところの万年眠気さん何とかしてくださいよ」
ほぼ同時に言うと一瞬キッと睨みあいそしてまた笑顔に戻る
「…お…お前らいい加減に…」
ぐぅううううう~…
公園中に響き渡ったなんとも間抜けな音
「…アイツまた腹減らしてるのか;」
悠助を捕まえたまま京助が呆れる
「僕がお肉持って帰らなかったから…僕…ハルミママ怒ってた?」
悠助がしゅんとなったのをみると京助がポンポンと頭を軽く叩き
「探すの手伝ってたんだろ? 俺からも母さんに謝ってやるから…とりあえず鼻水拭け」
悠助の鼻からタリと垂れている鼻水をみて京助が言う
「ティッシュとかないのか? 学校から帰ったまんまならポケットに入ってねぇか?」
京助に言われて悠助があちこちのポケットに手を入れてティッシュを探す
「あ…」
悠助が小さく声を上げた
「ないのか…しょうがねぇなぁ;」
京助が自分のパーカーの袖の部分で悠助の鼻水を拭いた
外灯の明かりで照らされた袖口がテカテカ光る
「…悠?」
ポケットに手を入れたまま動かない悠助に京助が声をかけた
「…ちゃんとエサあげてるの?」
矜羯羅がクスクス笑いながら乾闥婆に言った
「あげていますよ? ただちょ------------っとわがままなんです」
にっこり笑って矜羯羅に言うとその笑顔のまま迦楼羅を見た
もはや完璧にペット扱いの迦楼羅
顔は笑っていてもなにやら背後に般若面が見える様な気がする
怖い
「…んがら…」
制多迦が矜羯羅の名前を呼ぶと矜羯羅は指をはじき小さな玉を飛ばして制多迦にぶつけた
「…りがと」
額をさすりながら矜羯羅にお礼を言う制多迦
「あんまりバコバコぶつけると馬鹿になりますよ? まぁ…これ以上ならないかもしれませんけどね」
乾闥婆が首を少しかしげて笑顔で矜羯羅に言った
「ちゃんと力加減してるから」
にっこり笑って乾闥婆に返すとその笑顔のまま制多迦を見た
顔は笑っていてもなにやら背後に仁王像が見える様な気がする
怖い
そんな二人を前に制多迦と迦楼羅が立ち尽くしていると
「こら!! 悠!!;」
悠助が走ってきた
作品名:【第四回】わき道・寄り道・帰り道 作家名:島原あゆむ