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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回・四 】学び舎の誘惑

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握り締めていたフルートに女子生徒は息を吹き込んだ
非常階段の下で一人楽譜も見ずただ吹く
一通り吹くと口を離し空を見上げ溜息をつきそしてまたフルートに口をつけ吹き始める
「吹奏楽部員だな」
京助が言った
「…吹奏楽…? …あの子の音泣いてるっちゃ…」
緊那羅が悲しそうな顔で女子生徒を見る
「音が泣くのか?」
京助が聞いた
「…泣くっちゃ」
ふっと笑って緊那羅は女子生徒に向かい歩き出した
「笛、好きだっちゃ?」
「きゃぁ!!!」
緊那羅に突然声をかけられて女子生徒は小さく飛び上がり悲鳴らしき声を出した
「あ…ごめんだっちゃ;」
驚いた顔で緊那羅をじっと見る女子生徒に緊那羅が謝った
「あ…えと笛…が…」
「笛…?」
緊那羅が女子生徒の手にあるフルートを指差すと女子生徒はクスっと笑って
「これはフルートっていうの」
そういってフルートを見せた
「フルート?」
「楽器だよ楽器。外国の」
物珍しそうにフルートをまじまじと見る緊那羅に京助が後ろから言った
「…えと…君は…フルート…? が好きだっちゃ?」
「宮津さんだとさ」
京助が女子生徒の名札を見て緊那羅に名前を教えた
「宮津さん…私はきんなら…む子だっちゃ;」
緊那羅が少し口ごもりながら名前を言った
「きんなラム子さん? …転校生?」
「まぁそんなとこ」
宮津の質問に京助が答えた
「そっか…見たことないから…私はフルートっていうか音楽が好きなの。エレクトーンも小さいころからやっているし…でも…」
宮津が俯いてフルートを握り締めた
「…私ね…決めないといけないの」
「決める…って?」
悲しそうにフルートを見つめる宮津に緊那羅が聞いた

「進路だろ」
京助が言った
「三年生だろたしか」
京助の言葉に宮津が頷いた
「進路?」
「えーっとな…将来何になるか具体的に決める…高校どこ行くかとか? いわばこれから何をしたいかっていうの三年になったら決めねぇと駄目なんだ」
緊那羅が聞くと京助が考えながら答えた
「…音楽一本で行くか…それとも音楽をあきらめて他に進むか…それで昨日もお父さんと喧嘩しちゃって…。あ、ごめん;私ったら…本当…ごめんね…」
泣きそうな笑顔で京助と緊那羅に謝ると宮津は再び俯いた
「こんなこと聞いても嫌になるだけなのにね…私…」
宮津の声は震えていた
「…その笛…ちょっと貸してくれないっちゃ?」
「え…?」
緊那羅が宮津に言った
「お前吹けるのか?;」
京助が緊那羅に聞く
宮津からフルートを受け取ると緊那羅はフルートを優しく撫でた