【第三回・参】無視から始まるサバイバル
結局放課後になっても姿を見せなった京助を五分の一心配し後の半分はなにやら他の事を思いながら3馬鹿は市街からちょっと離れた坂の上にある栄之神社へと足を向けた
「風邪でも引いたんかねー…」
南が自転車を押しながら言った
「でも昨日は元気だったぞ?」
中島が昨日の京助の様子を思い出して呟いたその時だった
チャ~ンチャ~ララ~チャ~ンチャ~ララ~…♪
坂田の鞄から聞こえてきた着信音に3馬鹿は足を止めた
「…お前いいかげん親父さんからの着信葬送行進曲にするのやめろよ…;」
南が半笑いで坂田の肩を叩いた
「アイツはコレで充分なんだ」
坂田がブスっとして携帯を取り出し通話ボタンを押した
「…なんだよ」
あからさまに不機嫌な声で対応している坂田を中島と南が黙って見ている
五分が経過した
坂田の第一声『…なんだよ』から全く会話が無い
「…通じてるのか?」
中島がボソッと言った
「…さぁ…」
南が首をかしげて答えた
いっぽう坂田父は携帯を持ったまま固まって五分が経過していた
「…組長…やぱり俺が若に言います」
見るに見かねた柴田が固まっている坂田父の手から携帯を抜き取り
「若、柴田です」
話し始めた
「…柴田?」
ようやく会話が始まり南と中島も坂田の近くによって耳を澄ませ向こうの声を聞き取ろうとしている
「若。京助君を捕獲しています」
「…は?」
柴田の言葉に3人が顔を見合わせた
「今客間で…少し抵抗されたもので眠って貰っています」
柴田は淡々と話す
「な…そりゃどういうことだ!? 柴田! どうして京助…」
坂田が声を張り上げた
「組長と若のためです…そして俺の意志でもあります」
今だ固まったままの坂田父…組長をチラリと見て柴田が言う
「…若一人で帰ってきてください。そうすれば…」
まだ何か言いかけていた柴田を無視して坂田は携帯を切った
プー…プー…という音しかしなくなった携帯を切り坂田父に手渡すと柴田が自分の携帯を取り出しどこかにかけている
「…俺だ。…若がもうすぐ帰るだろうから捕まえておくように…他に誰かついてきたのならば追い返せ。抵抗したら少々痛い目にあわせても構わない責任は俺が取る…ああ…頼んだぞ」
「…京助が…誘拐…?」
携帯を握り締めたままおそらく(絶対)キレているであろう坂田を見つつ南が言った
「しかも坂田組に…どうして…」
中島も言った
「…んのクソ親父!!」
坂田が大声で叫ぶと自宅方向に向かって走り出した
「…俺等どうしましょう」
中島が南を見た
「中島は俺のニボシ (自転車名)で京助ン家いってくれ。俺は坂田について行く」
南が中島に自転車を渡して坂田の背中を追いかけた
中島もニボシ(自転車名)に跨ると全力で漕ぎ出し京助宅を目指す
「…柴田まで…何考えてやがるんだ…」
走ると授業道具とその他モロモロでガチャガチャいう鞄を邪魔にならないよう後にやって自宅へと急ぐ
後から南が追いかけてきていることにも気付いていないだろう
「…クソ…ッ!!」
坂田は小さく呟くと走る速度を上げた
作品名:【第三回・参】無視から始まるサバイバル 作家名:島原あゆむ