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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回・参】無視から始まるサバイバル

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「京助! 弁当忘れてるっちゃーッ!!;」
緊那羅の声響くいつも通りの栄野家の朝
京助が弁当片手に玄関からつんのめるように飛び出して石段を駆け下りていく
「京助ー!! 鞄-----!!;」
その後から緊那羅が通学鞄を持って追いかけ石段の下に向かってぶん投げる
夏休みボケとは関係なく京助は今日も遅刻決定だった
弁当箱を鞄に入れ全力疾走で学校に向かう
京助の運動神経のよさはこんなところで鍛えられているのかもしれない
もう生徒の姿が見られない通学路には犬を連れたおっさんやご高齢のマダムが優雅に歩いていた
「ちくしょー…眠みぃ…;」
ぶつくさ文句を言いながら正月町のメインストリートに通じる路地に入った京助の横を黒い高級車が通過し止まった
「この狭めぇとこにでっかい車のってくるなよな」
京助は走る速度を落さずその高級車の横を通り過ぎようとして
「京助くん」
呼び止められ足を止めた
ンガ----っ という音と共に車のパワーウインドが下がって見覚えのある顔が現れた
「…柴田…さん?」
柴田さんといわれた青年は『や』と片手を挙げた
その柴田の奥にもう一人見覚えのある顔…
「…坂田の親父さん…」
坂田組二代目組長だった
何度か見かけたことはあるが話したことは無い
柴田はその側近…右腕的存在でいつも坂田父の傍にいる愛想のいい青年だ
坂田父はいつも黒いスーツか着物姿で幅広のサングラスをかけている
「どうしたんスか? 坂田ならたぶんもう学校…」
「いや君に用があるんだよ」
にっこり笑うとドアを開け柴田が車から降り京助の腕を掴んだ
「一緒に来てもらいたいんだ」

二時間目と三時間目の間の休み時間南と中島が教室にやってきた
「京助今日休みか?」
京助はまだ来ていない
「無断欠席か?」
中島が京助の椅子に座って机の中を見た授業道具は入っていない
「ウニ(担任)は別に何も言ってなかったし…何かあったんかね?」
坂田が腕を組んで椅子をギーギーさせた
「またテンちゃんとかきてるとか?」「最強のお方がいらっしゃってるとか?」
南と中島がハモってお互いを指差すと親指を立てた
「帰りにでも寄ってみるか?」
坂田が眼鏡を上げながら二人を見た
「そうだなー…そうすっかー…」
三時間目のチャイムが鳴り響いた

「………;」
車内は思った以上に広かったが京助は肩身が狭かった
抵抗したが無理矢理車に押し込められたのだ
「…どこに連れていくんスか。俺学校あるんスけど」
柴田に聞くと
「おとなしくしていてくれれば手荒なことはしないから」
といってにっこり笑うだけだった
京助は落ち着かず車内をぐるり見渡した
革張りのシート、運転手もサングラスをかけた怖そうなおっさんだった
助手席には場違いというか…この車内には似合わない小さくでも綺麗な花束がある
坂田父の方を見ると坂田父が顔を背けた
「…あのー…」
京助は思い切って声をかけてみると
「あ、駄目だよ京助くん」
慌てて柴田が止めた
「…組長と話したいならコレ使ってくれないかな」
そういって柴田が取り出したものは携帯電話だった
手渡された携帯と坂田父を交互に見て柴田を見る
「…なんで隣にいんのに携帯…;」
「組長は極度の…重度の人見知りなんだ。それで今朝も若と…」
その時柴田の胸のポケットからバイブ音が聞こえてきた
横を見ると坂田父が窓の方を見ながら携帯をかけている
「…まさか…」
京助が携帯のボタンを押した柴田を見ると坂田父の声が柴田の携帯と生の声とがハモって聞こえた
「…もういい柴田、後は俺が自分で話す」
そういうと坂田父は携帯を切った
「…マジかよ…;」
京助が呟くと同時に柴田から手渡された携帯が鳴った
画面には【組長】の文字が表示されている
「ホラ、とってとって」
柴田が通話ボタンを押して京助の耳に無理矢理押し当てた
「…も…もしもし?;」
京助が恐る恐る電話の向こう…といっても実際は隣にいる坂田父に話しかけた
「…手荒なことをしてすまなんだ…柴田が言ったように俺はかなりの人見知りでね…人と目が合うと何を話していいかわからなくなるんだ…携帯が出てきていい時代になった…昔は紙コップと糸が必需品だったからな…そうは思わないかい?」
隣から電話から同じことをハモって言われて京助は
「はぁ…;」
としか言いようがなく…困った顔をして柴田を見てもただ笑顔を返してくるだけだった
「で…俺に何の用なんスか?」
「深弦のことなんだが…」
「坂田?」
いきなり声のトーンが下がりガックリと肩を落として溜息をついた坂田父はサングラスを指で押し上げてゆっくり話し出した
「な…冗談じゃないっスよ!;」
話を一通り聞いた京助が大声を上げた
「そんなことで俺連れてこられたんスか!;」
「そんなこととはなんだね。俺にとっては重大問題なんだが」
携帯を握り締め直で坂田父に言った京助の携帯から坂田父の声が聞こえる
しかし話している坂田父は隣にいるので充分声は聞こえているのだ
「とにかく! 付き合いきれねぇんで降ろしてくれないですか」
京助が運転手のおっさんに声をかけると運転手のおっさんの携帯がなった
「…戻るぞ」
坂田父が指示を出した
「ごめんねおとなしくしてくれないかな」
柴田が京助の肩を掴んで座らせたが京助はその手を振り払い柴田を睨む
「坂田がキレるの当たり前じゃん!! 俺だってたぶんキレるっての!! そんなことされたら!! 降ります!降ろしてください!!! むしろ降ろせ!!」
京助が運転手の肩を掴んで揺すると
「…しかたないな…」
トントンと柴田が京助の肩を指で突付く
「なん…!!?」
みぞおちクリーンヒット
「…ごめんね京助君」
遠のく意識の中で京助は謝る柴田の声を聞いた
柴田の携帯が鳴った
「…戻ったらひとまず縛って客間にいてもらいます…若には俺から連絡しておきますか?」
「いや…深弦には俺から連絡する」
「いいんですか? 大丈夫ですか組長」
近くにいるのに携帯で会話し、会話がハモって聞こえてくるおかしな車内
京助はおかしな会話のキャッチボールの飛び交う中ノビていた
もうすぐ三時間目が終る
京助の腹の虫がキュウと鳴いた