剣道部と風に揺れる相思花
積みあがったコップとスポーツドリンクの入っていたジャグを見上げる。
「おしっ。やるぞっと。」
スポンジに洗剤をつけ、小声で意気込む。
「全部綺麗にしてやんよっ。」
積みあがったコップの山を低くしてゆく。手元は正確に。頭は物思いに耽る。
ほかの人は誰もいない水道場。小声でつぶやく。
「男子の絡みがBLにしか見えねぇよ。」
剣道着と言うものは、多少着崩れるのはしょうがなく。胸元が見えたりするのは無神経な中学男子では必然でして。
それで絡んでるんだからBLに見えないわけが無い。
柔道の固め技して遊んでるのは、押し倒しにしかこの腐った思考回路では見えない訳で。
「ゴホンっ。」
咳払いをして、腐った思考回路を打ち消して洗い終わったコップを水切り籠に移し、
ジャグも水を切り陽の当たるところに置き乾燥させる。
洗い終わった物を目の前に置き暫しの間自己満足。時計を見ると示す時刻は
「1時54分って稽古終わってから54分も経ってるしッ。」
土曜の鍵当番は私。だから・・・
「先生に怒られんのあたしじゃんッ!?」
道場の扉をちょっと暴力的に開ける。
「早くしてくださいっ。鍵閉めますよ。」
で、目に入った光景が、悠斗が正座、佐藤先輩がその前に仁王立ち。その他男子が遊んでるという毎回恒例な状態に。
「いやん。」
そんなキモいボケすんな笠間は。
「ごめん。ちょっと待ってて。」
お説教再開しないでください。西篠先輩は。
「おー。ごめんごめん。」
山神先輩、謝りながら遊ばないでくれますか。
「ははっ。ウケルー。」
悠斗。お前は調子に乗るな。
「小林ぃッ。」
「お前ふざけんなっ。」
西篠先輩、山神先輩からの鉄拳制裁タイムの始まり、始まりぃ。あー怖い怖い。剣道場の床だから痛いだろうなぁ、プロレス技。萌える暇すらねぇ。
「そういえば、皆さん。」
意外なことに皆がこっち向く。先輩までも。気になってたこと聞いてみる。
「防具袋見当たりませんが…。試合の準備しましたか?」
「終わってる。だよな、一年。」
作品名:剣道部と風に揺れる相思花 作家名:成瀬 桜