剣道部と風に揺れる相思花
西篠先輩が確認をする。当然だとでも言わんばかりに。無論女子はもう40分くらい前から終わっていた。
だが、一年は沈黙。口を開いたのは・・・。
「俺もやってねーよ。」
山神先輩だった。こちらも当然のように、平然とした少しだけ挑発的な笑みを浮かべていた、いつも俺様チックで面白い、よく自らを神だと言い張るあの山神先輩が。
そして、西篠先輩の眉がピクリと動く。嫌な予感がして道場のドアを閉める。
「はよ準備しろッ。このアホっ!!!!」
ドアを閉めてきいてもかなりの大声だった。
その後鍵当番を悠斗に任せ、暇だったので水切り籠からコップを一つひとつ拭いていった。
水道から出てくる水が心地よい。地球温暖化かなんだかわからないが、9月でこれは異常気象だ。絶対に。
早く家に帰りたいなぁ。私もDVDに取り溜めしたアニメが見たい。
多井先輩たちは流行のドラマが始まっちゃうから。って言って3人は帰っていった。女の子らしいです。はい。
今度こそ集中するために大きく溜め息し、蝦夷がいないことを確認。剣道場の出入り口前の近くに腰掛けた。本を開き・・・
「清尾ちゃん。何読んでるの。」
いつから居たんだこの人は。てか本読み始めるとなんでこの人は現れるんだ。
「狭き門です。アンドレ・ジッドのです。」
「しらね。」
即答かいっ。いい加減しっかり本読ませてくれ。
・・・・・・。私と本の間に蝦夷。本が読めないじゃないか。
「読書妨害禁止令出していいですか?」
「清尾ちゃんが本読まなきゃいいんじゃないの。」
「・・・そっちですか。」
「そっちです~。」
最悪だ。この先輩最悪だよ。
「最悪でーす。」
勝手に人の心を読むなぁ―!
作品名:剣道部と風に揺れる相思花 作家名:成瀬 桜